箱物語(仮)41


チーム・パンドラの箱本部。
記録追跡課、待機室。
メンバーは年末の大掃除をしていた。
普段気がつかないだけで、埃があちこち。
いい加減、埃がすごいので、ルカは窓を開ける。
冷えた空気が一気に待機室に満ちる。
「うひゃー」
と、カラットが妙な声を上げる。
「さむいっすよ、ルカ」
「埃で喉がやられるわよ」
「そうっすけど」
「まぁまぁ二人とも、とにかく大掃除しないと」
ヤンが割って入り、また、掃除にかかる。

「やぁやぁみなさん」
穏やかな声がする。
シジュウが待機室にやってきた。
「今年はこの面子ですけど、来年に一人入る予定ですので」
「シジュウ、誰かはいるのか?」
はたきをかけていたカラットが興味しんしんで問いかける。
「はい、まだいろいろ手続きが整っていませんけれどね」
「俺もとうとう先輩なんだな、いいなぁ、先輩って」
カラットは鼻歌を歌いだした。
さっきまで寒がっていたのも、忘れてしまったらしい。
「まぁ、そんなわけでこの面子で大掃除をよろしくですよ」
「合点承知!」
カラットは宣言する。
ルカは能天気なカラットにため息をつくと、
雑巾であちこちを拭きだした。

記録追跡課に誰かが入るということ。
シジュウの魔術箱に入るもの。
それは果たしていいことなんだろうか。
ルカはカラットのように喜べない。
なんだか、年をとったのかなとも思う。

「ルカさん」
シジュウが呼びかける。
ルカは雑巾で拭いている手を止めた。
「大掃除したら、みんなで縁起物でも買いに行きますか」
「なんでまた」
「来年も無事に過ごせますようにと」
「そんなこと、シジュウは信じるの?」
「信じることで何かが起きるのなら、それは信じてみてもいいんじゃないかなと」
「みんな確率の問題じゃないの?」
シジュウの魔術箱の中には、膨大な記録。
その記録でなんだって出来る。
そのシジュウが縁起物というのだ。
「何でも、気持ちですよ」
シジュウが微笑み、三角巾をつけた。
「さぁ、がんばって大掃除ですよ」

シジュウもよりどころが必要なのかもしれない。
ルカはそんなことを思った。


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