箱物語(仮)82
通信通信。
いろいろな通信が飛び交っている。
有線無線を問わず。
ツヅキは別にそれが見えるわけではないけれど、
この膨大な通信というものは、最後にどこに行くのだろうとは思った。
言葉の墓場があるとは、
以前ルカさんが言っていた気がする。
酒がちょっと入ったときだろうか。
いつだったか思い出せないけれど、
ルカさんらしいようならしくないような、
不思議な感じがしたことを覚えている。
通信記録の墓場はあるのだろうか。
ルカさんの言葉の墓場とは別に、
なんというか、流れ流れ着く通信網の果てがあるような気がした。
記録という記録が、
どこかの海の砂浜みたいなところにうちあげられていて、
それは、死にかけの魚みたいな姿をしているかもしれない。
記録に姿をつけると、
ルカさんあたりから、にらまれる気がする。
記録に余計なことをするなと。
ルカさんだって言葉の墓場とか言い出しているじゃないですか、とか
言い出したら後が怖いから、
ここはルカさんの顔を立てておく。
死にかけの魚のような記録。
その砂浜にやってくる人は、
その魚にどんな意味を見るのだろうか。
通信網の果ての砂浜に、
今日も膨大な記録が上がるに違いない。
でも、果ての人にはそんな意味などわからずに、
ただの魚として認識しているのかもしれない。
記録。
通信。
届くのは本当に届いているのだろうか。