箱物語(仮)99


箱の中身には。
いったい何がある、べき、なのか。

ルカは今日も箱の目を使って、
違法記録を取り締まる。
誰もルカのことなど見えない。
疾走するルカは、展開刀を持って、
見える過去の箱を追う。

あれはそろそろ内側から壊れる。
記録が多すぎるのだ。
違法記録も山ほどだろう。
そもそも、合法記録だけで、
あんなになるはずがない。

「ヤン、拳箱を準備」
「はい」
ヤンが小さい拳箱の設定をする。
小さく、短く、音。
ルカが、音を確認した、それと同時に、大きく跳躍。
展開刀をルカはかまえる。
逃げる相手の過去の箱に、展開刀を突き立て、
「展開」
ルカは宣言する。

過去の箱からいろいろなものが流れ出し、
ヤンがそれを拳箱に収めていく。
思った通り違法記録ばかりだが、
ルカはふと、記録が欠け気味であることに気が付く。

違法記録をすべて落とし、
展開を解除しようとしたその時、
展開していた過去の箱から、
小さな存在が顔を出した。
「おそうじありがとう」
小さな少女のようであり、妖精のようなそれは、
ルカが展開を解除すると、記録の中にもぞもぞと入っていった。

あれは記録なのだろうか。
それとも、見たまま妖精のようなものなのだろうか。
過去の箱に同居する、
何かの生き物なのだろうか。

知らないことは山ほどある。
ルカにも、そういうことはある。

感じるすべてがすべてじゃない。
過去の箱を感じるだけが、
すべてじゃない。

過去の箱の中は、
いつも、わかるものだけとも限らない。
ルカは一仕事終え、
違法記録のなくなった相手を見送る。
過去の箱の中から、小さい少女が、手を振ったような気がした。
気のせいだ。
そうでもないかもしれないけれど。


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