箱物語(仮)101


さんたくろーす。
ルカは町の騒々しい電飾の中から、
髭のおじいさんの絵を見つける。
みんなにプレゼントを運ぶという奇特なおじいさん。
何者なのだろうというのは、
この時期野暮なものなのかもしれない。

欲しいものはなんだろう。
タカハにも何か言われたかもしれないけれど、
特にこれといってものすごく欲しいものがあるわけでない。
変わりたいわけでない。
何かを得たいわけでない。
ただ、そうだな。
ルカは、上を見上げる。
冬の空は太陽がいなくなるのが早い。
もう、暗くなって、
電飾で星すら見えない。
そうだな。
ルカは、思う。
世界が終らなければそれでいいかなと。

誰かの世界を終わらせるような仕事をしているルカだ。
記録を奪い、
なかったことにしている仕事。
だから、誰かの世界はひっくり返ったり、
壊れたりもしているに違いない。

ただ、この大きな世界が、
壊れなければいいかなとルカは思ってしまう。
おおむねの人は笑顔を忘れていなくて、
ルカも帰る場所があって。
ここでぷつりと終わってしまうのも、幸せなのかもしれないけれど、
ルカは世界が終ってほしくないと思う。

サンタクロースの出番が終わったら、
いよいよ大掃除と、年末と。
駆け足するように12月が過ぎていく。
気のいい仲間と、これからも、
いるかいないかわからない仕事を続けていられれば。
ルカとしては、それで満足だ。

確たる答えなどなくて。
どこへ向かっているかわからなくて。
本当に正しい人からすれば、
この世界が滅んだ方がいいとかいうことになるの、かもしれない。

ルカは記録を追う。
世界を守っているわけじゃない。
ルカの仕事だからそうする。
記録を追うことで、
誰かの笑顔が増えればいいと思っている。
それがルカの道標。

北風は寒く。
世界は今日もゆっくり回っていて、
ルカはそのスピードもまた、好きだ。


続き

前へ


戻る