ずっと自由で 05
デタラメと呼ばれた君の夢の……
今日は晃司のバンドの練習を見学。
軽音部の男だけのバンド。
ヒデの音源と比べちゃいけないけど、
勢いと、敬意はすごく感じる。
そして、楽器店のスタジオで、
楽器も歌も、すごく迫力があり、
高校生だって、やればこんなにすごいんだと思う。
僕はスタジオの隅っこでハムスターのように丸くなって、
音のぶつかり合いを見ていた。
そう、ぶつかっているんだと僕は感じた。
突然、晃司が歌うのをやめた。
「やめだやめだ!」
晃司はマイクを持ったままで怒鳴った。
「そんな気の抜けたギターを聞かせるのかよ!」
晃司が苛立ちを隠さずに怒鳴る。
ギタリストも言われて怒りをあらわにする。
「ドラムもベースも、うねるロックが足りないんだよ!」
晃司はそこまで怒鳴って、
頭をぐちゃぐちゃにかきむしって、
「もういい!」
そう言ってスタジオを出て行った。
スタジオには、楽器隊と僕が残った。
僕は部外者だ。
いたたまれない気分のまま、
僕はどうしようか考える。
「真人っていったな」
ギタリストが僕に声をかけてきた。
僕はぐるぐる考えをちょっと中断する。
「俺たち、どんな風に見える?」
ギタリストの問いに、僕は答える。
「ヒデに近づこうとして、大きさに圧倒されてます」
僕は続ける。
「楽器の方も、晃司も」
ギタリストは少し微笑んだ。
「あいつ、あいつなりにヒデを歌いたいんだよ」
僕は痛いほどわかる。
「ただ、ハードル高すぎんだよな。俺たちも晃司も」
ギタリストはギターをピーンと鳴らす。
「僕が思うに」
小さな僕は話し出す。
「ここでヒデの大きさに負けちゃいけないです」
根拠は何もないけれど、
僕はそう思った。
楽器隊はうなずいた。
「晃司はヒデになれなくてイライラしているんだと思います」
「そうだな、ちょっと晃司を落ち着けてきてくれ」
「はい」
僕はスタジオを出て、晃司を探しに行った。