九龍的日常:5月7日


パンダ広場に奇妙な二人組がいた。
片方はペンキの黄色をぶちまけたような帽子をかぶっている。
もう片方は、ウサギの着ぐるみを着ている。
イエローハット&オートバックスバニーだ。

「イベント会場はここになるかな」
イエローハットは言う。
「大体イベントって何するのさ」
バニーが問う。
「イベントは、そうだね」
「うん」
「とてつもなく楽しいことをするのだ!」
「わぁ!それっていったいどんなことをするの?」
バニーはわくわくと次の言葉を待つ。
「バニー」
「なに?」
「これはね、当日までのトップシークレットなのだよ」
「とっぽれーしっく?」
「トップシークレットだよ」
「なにそれ?」
「イベントを作るものだけが、その秘密を知っているのだ」
「ハットさんは知ってる?」
「それもトップシークレットなのだ」
「すごいね、トップシークレットだ」

パンダ広場はいつものように静かに。
イエローハットは何かを見るような見ないような顔をしている。
「ハットさん?」
「なんだい?」
「今ハットさんが感じているのも、トップシークレット?」
「どうだろうね、きっとバニーもわかるはずさ」

バニーは、ふっと爆竹の残り香を感じた気がした。
火薬の匂い。
そして、一瞬だけ、お祭りのそれを感じられたような気がした。
笑顔、お神輿、妄人、いつもはあえない人たち。
それは一瞬。
でも、永遠のような一瞬。
バニーは気がつけば、パンダ広場に呆けたように立っていた。

「あれもまた、イベントなのだよ」
「イベント」
「人はイベントと称して、集まり、笑うのだ」
「いいね」
「そう思うか」
「僕は、そういうの、好き」
「悪くない」

「さて、イベントの噂を仕入れに行くか」
「今度のイベント?」
「そう、イベントは常に最高でなければならんよ」
イエローハットが歩き出す。
「待ってー」
バニーがそれに続いた。


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