九龍的日常:5月9日


男人街。
九龍の町の中でも、比較的老舗の集う街だ。
ミスター・フーは街を歩いていた。
店が撤退しては、新たな店が入る。
サイクル、円環。
古いもの、新しいもの、古くて新しいもの。
この町にいい風が吹く感じがするのは、
きっと円環がうまくいっているからに相違ない。

ミスター・フーは、創造を愛する。
何かを作る力。
それは世界を回す力だと信じている。
破壊も愛している。
全ては円環につなぐための儀式。
創造も破壊も、すべてを愛している。

嘘も真実も。
全てを巻き込んだうねりが街を作っている。
静かに見えて、この町は結構熱い魂が流れている。
龍脈とは、かくも熱きもの。

「フーさん、お元気ですか?」
サングラスをかけた青年、ロックが声をかけてくる。
「私は元気だよ」
「うん、そうですね」
ロックはちょっとだけ微笑み、
「フーさんなら、この町自身と会話ができそうですよね」
「それは?」
「そのままですよ、町の感情とかもわかりそうだなって」
「わからんよ、そんなもの」
「そうですか?」
ロックが問うと、フーは宙を見て答えた。
「わからないがな、風が少し高揚しているのを感じるよ」
「きっと、イベントがあるからですよ」
「イベントか」
フーは少し笑った。
住民のイベントに、町が高揚している。

イベント、祭り。
一つの区切り。
さて、この町に何が起きるのかな。

破壊そして誕生。
虚と実。
私たちがいるところはなんなのか。
この町は実にあるのは、虚であるのか。
本当にこの町は存在するのか。
私たちは本当にいるのか。

全てが嘘とレッテルを張られても。
うねる龍脈は止まらない。
それが破壊を生むとしても。
それが創造を生むとしても。
ミスター・フーは、そういうこともまた好きだ。


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