九龍的日常:5月10日


龍頭街。比較的新しい通りだ。
その新しい通りであっても、
昔からいました的な店が軒を連ねていて、
時間感覚がおかしくなる。

シアンは、龍頭街の物の怪を退治していた。
ほっとくといくらでも出てくる。
まったく、ゴミが果て無い感じだ。
しかし、ゴミとたとえたものの、
ゴミはほっとくとさらにゴミが増える。
ここに捨ててもいいということになってしまう。
そういうことはよくないから、
ゴミは定期的に回収してちゃんとあるべき場所に集めて処理。
…するのが、風水師の仕事に近いなーと、シアンは思う。
正義の味方っぽく思って始めたけど、
なんか、ゴミ処理のお兄さんになっていないかと思う。

「やぁ」
眠そうな声がかかる。
先輩風水師の、ケージだ。
「根詰めると、邪気にやられるよ」
「そんなこと言っても」
「呼吸するように、邪気を流すように、そうやれば少し違うよ」
「呼吸?」
「流れに返すんだよ。大きなこの町の流れにね」
「そんなこといわれても…」
シアンは戸惑う。
大きな流れがいまいちつかみづらい。
ケージはにっこり笑った。
「むきになって汚いところだけお掃除しててもよくないよ」
「うーん…」
「町を歩いて、みんなと会話して、そして、物の怪がいれば退治して」
「それでいいんですか?」
「うん」
ケージは屈託なく笑う。
「だって、町の空気をまずは流さなくちゃ。風水師ってそういうものだよ」
「風水師って…」
「さて、お散歩お散歩。イベントまでにもう少し風を回さなくちゃ」

ケージはその場を去っていった。

シアンは一人残され、
「どうするかな」
と、ポツリつぶやき、
深呼吸を一つして、
「風を回す、か」
龍頭街の階段を上がっていった。
その足取りは少し軽い。


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