九龍的日常:5月12日


通称まんじゅう広場。
大通りから路地一本入ったあたりだ。
そこにはいつもふかふかのまんじゅうが置いてあって、
だれが言い出したか、まんじゅう広場といわれている。

ビビアンは、ちょうどそこに通りかかり、
誰もいないのを確認して、
まんじゅうを一ついただこうとした。
「こら」
おばさんの声がかかった。
この声はホァンおばさんだ。
「ここのはダメなんだって、エイディーが言ってたわよ」
「おいしそうなのになー」
ビビアンは心底がっかりする。
「ここのまんじゅうは、何だったけ、モモジーの物だってさ」
「なにそれ?」
「おばさんも、よくわかんないけど」

二人はモモジーに関してあれこれ想像をたくましくする。
物の怪の元締めだとか、
カミサマの何かとか、
幽霊みたいな何かとか、
それとも、大金持ちの道楽とか。

まんじゅう広場で、ホァンとビビアンは語り合って笑いあう。
そこに、シャックーがやってきて、
「あー、ここでサボってたんですかー」
「ああら、見つかっちゃったわね」
「何話してたんです?」
「なんだっけ?モモジー?」
「ああ、イベントにいる、正体不明のおじいさんという話ですね」
「そうなんだー。で、シャックーは何でここに?」
「そうそう、蒸かした点心がいい感じですよ」
「あ、そうだ、点心やってたんだったわ」
点心と聞いて、ビビアンが目を輝かせる。
「そっちのは食べてもいい?」
「ああ、いいともさ」
ホァンがにっこりOKを出す。
ビビアンは大喜びして、大飯店に戻っていく二人についていく。

その様子を見ていた爺さんが、
まんじゅう広場のまんじゅうを一口パクリ。
もぐもぐ食べて、ほぅと満足げなため息をつく。

「うまいものがかわらないのは、いいことだ」

爺さんは、そういってどこかに消えた。
桃爺かどうかはわからない。


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