九龍的日常:5月19日
病院。
病気にかかわるところ。
カートンは病院にやってきた。
何があるというわけでもない、
診断だけしてくれるロボットみたいなのがある。
いや、脳だけ医者のサイボーグなのかもしれない。
信頼できるのかできないのかはわからない。
いつも閑散としている病院である。
この町の老人は、どっちかというと元気だから、
需要が少ないというものなのかもしれない。
それでも、珍しく病院に人がいた。
ミスター・フーだ。
「ども」
カートンはあいさつする。
「やぁ」
フーもあいさつを軽く返す。
以前何かで彼の噂を聞いたときは、
悪のマフィアみたいな人と言われていたけれど、
なんとなく、感覚違うなぁとカートンは思った。
メイニィさん、イメージで判断しちゃあいけないよと、
カートンは、心の中でメイニィに注意する。
「カートンさんといったかな」
「はい」
「肺の病ですかな」
「よくいわれますけど、それもありますけど」
「けど?」
「年の所為か、疲れがひどい日がありまして。栄養剤でもと」
フーは笑った。
くっくっく、と、笑うのだが、
おかしくてしょうがないのを押し殺している。
「年なんて関係ないですよ」
「でも、イベント前にバテそうで」
「栄養剤より、ちゃんと食事をした方がいいですよ」
「食事ですか」
「飯店に集う連中の健康的なこと。老いも若きも、元気ですよ」
「そういうものですか」
「そういうものですよ」
カートンは、フーという男は、割とまともなのかなと思い始めた。
「イベントは、どうなるかはわかりませんけれどね」
フーが語りだす。
「大きなはじまりかもしれないし、一つの区切りなのかもしれない」
「ふむ」
「この町の龍脈的な気の流れが、回り続けるのを見たいですね」
フーはちょっと視線をあげる。
何か見えているのかもしれない。
「私は、すべてを自分の記憶に、焼き付けたいと思うのですよ」
カートンは、フーならできそうだと思った。
「さて、飯店に行きますか。皆さん集っていらっしゃるでしょう」
「そうしますか」
カートンが答え、男二人は路地を歩きだした。
歩きタバコはしばらく封印だ。