世界の果て


挿絵が色づき、僕の視界を覆う。
風が吹き、僕は目を閉じる。
再び目を開いたら、そこは山のような本なんてない。
草原に岩が点在する、さっきの挿絵の場所だ。
「世界の果て」
僕は知らずつぶやく。
こんなに様々のものが存在する世界に、
僕は果てがあるなんて思っていなかった。

草原、緑の草が風に揺れている。
草がけんかすることなく、きれいな波を見せている。
岩はその中、ぽつりぽつりとある。
草原を邪魔することなく、
じっと、ある。
空には雲が流れている。
風が強く吹いていて、雲は走るように。

僕は手近な岩に腰掛ける。
世界の果ての時間はくるくると回りだす。
朝昼夜を高速で。
日が昇り日は沈む。
雲が走っていく。
僕は時間が関わらないまま、そこから遠くを見る。

じっと遠くを見ると、海があるのが見えた。
僕は思った。
果てじゃない。
海が始まっていると、思った。
どんなに何もないところでも、何か始まっている。
ここは世界の果て、だけじゃない。
世界の始まりの場所でもあるんだ。
僕はうれしくなった。
僕は多分、この広い世界の果てを、まだ認めたくないのかもしれない。
どんなに果てだと終わりだといわれても、
僕は海を見出してしまう。
海が始まっているじゃないかと、僕は言う。

「いろんなものを見てきたんだね」
そっと風のような声が耳に届く。
「始まりを見出せるのは、いいことだよ」
白い風が吹く。
かすかに羽根が見えた。
「記録媒体の意識、フロッピー。君の小さな容量に何を記録するのかな」
僕は答えようとする。
けれど、今まで見たもの全て記録なんてできっこない。
忘れてしまうのだろうか。
風がまた吹く。
「多分君は花を見たことがないね。ここにもない」
「はな?」
「空を飛んで見に行ってごらんよ。今日は空を飛ぶにはとてもいい日だ」

見上げれば快晴。
強い風が後押しするように吹く。
ここから始まる。
限りない世界に向かって、僕は駆け出し、飛ぶ。


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