あなたが
あなたがそこにいるから。
あなたに触れたいと願うから。
だから僕は自由でいられる。
僕はあなたを思う。
あなたに関する記憶を頼りに、
あなたを思う。
無数のあなたの記憶。
すべての感覚を総動員してあなたを思う。
そのうえで、あなたに触れたいと願う。
感覚いっぱいにあなたを感じたい。
僕はゆらゆらとあなたから離れていくのかもしれない。
あなたは涙でとけた目から見るように、
ゆらゆらと揺らめく存在になっていく。
近づきたい、少しでも。
あなたがそばにいれば、
あなたに触れられれば、
あなた以外のものは、僕のとけた眼中にない。
僕には何もない。
離れていくあなた以外は。
あなたを感じたい。
抱きしめたいとも、自分のものにしたいとも、
何とも違う気がする。
ただ、あなたを感じたい。
あなたの痕跡をたどって、あなたに近づいて、あなたの言葉を聞いて、
そして、あなたのことを感じたい。
僕はあなたのほうを目指す。
あなたの感じていたことを、取り入れるかのように目指す。
とけた目はなかなか見えにくくなるけれど、
あなたへの道は果て無く険しい道だけども。
あなたを感じたいと願う、だから、僕は自由でいられるから。
あなたのためだけに開いていた感覚は、
やがて、あなた以外を閉ざしていく。
五感はあなたの思い出だけのために。
あなたが見える。
あなただけが見える。
あなただけを感じる。
あなたはそれを許すだろうか。
許さないだろうか。
僕が感覚を失ってあなただけを見ることを、
あなたはどう思うだろうか。
あなたがそこにいることで、
僕はどんなところにもいける。
僕は自由。
あなたとあなたの思い出と、自由を感じている。
空だって飛べる。
海だって越えられる。
あなたの苦笑いが見える。
困らせるつもりはなかったんだ。
ただ、あなたを感じたいんだ。
五感がまた、開かれる。
当たり前の日常に開かれる。
あなたはずっと遠くにいる。
あなたを目指して、飛ぼう。
それも僕の自由だから。
心は何よりも自由に、あなたを思って青い空を駆ける。