とじるひらく
多少年季の入った家だと思って欲しい。
掃除はしているけどガタが来ている。
まぁしょうがないと思いながら、
僕はその家に住んでいる。
ドアがかなりギーギーなったり、
ふすまがちゃんと閉まらなかったり。
まぁ、年季というか、ぼろだな。
それでもなんだかこの家が好きで、
今まで育ったこの場所に愛着もある。
さて、閉まりきらないふすまがある。
ふすまというからには当然和室で、
僕の寝室でもある。
畳に布団に、大の字が大好きなので、
ちょっと無理を通した結果だけど、あまり関係ないね。
で、その和室、
たまにいるはずのないものを見る。
おかっぱの市松人形のような子供。
最初に見たのはその子だったか。
多分少女。
僕は布団で夢うつつさまよっていたから、
夢だと決め付けた。
なのに、まぶたがちゃんと閉まっていなくて、
少女の困った表情を目に焼き付ける羽目になった。
それからも、閉まりきらないまぶたの向こうに、
いろいろなものをこの部屋で見ることになる。
漫画のような狸とか、
ありえない小ささの人間とか、
なぜか部屋いっぱいのこけしとか。
見える分にはかまわないけれど、
最初の少女が困っているようだったのを思い出す。
ある夜、やっぱり布団でうつらうつらしているとき、
やっぱり市松人形の少女が現れた。
僕は気力を振り絞った。
「どうして、ここに?」
少女はきれいな声で答えてくれた。
「閉じるか開くかはっきりさせてください。狭間のものが集ってしまいます」
気力はそこで途切れたけど、対処はわかった。
僕はふすまの修理を依頼し、
ふすまはちゃんと開閉ができるようになった。
みんなこれでここに集まることもないだろう。
狭間のものが良くわからない。
けれど、何でもない何かというのも、きっといるものだ。
ふすまを閉めて寝るようになってから、
一度だけ、市松人形の少女がやってきた。
古い子守唄を歌ってくれて、僕は心地よく熟睡した。
僕のまぶたはちゃんと閉じられ、
それ以来、妙なものは集まらなくなった。