怪談:かみなり
雷の鳴る夜は。
小学校で行われる、
地域の夏祭りがあった。
子供会の区切りで、いろいろな店が出たりした。
小さな祭りだけど、
小学生も大人も、みんな楽しみにしていた。
片付けがぼちぼち終わりそうな頃、
雨が降り出した。
だんだん激しくなってきた。
雷までなりだした。
歩いてきていた子供たちは、
校舎に避難することとなった。
真っ暗の校舎。
学校七不思議なんかが頭をよぎる。
そして、たまに青白い光が校舎を照らす。
人がいた!
子供たちは悲鳴を上げて、逃げようとして、
「待ってよ」
と、普通の声がかかって、振り返った。
「驚かせてごめん、ちょっとここに避難してるんだけど」
子供たちとどうやら同じ理由でここにいたらしい。
見たことない子供だけど、
きっとお祭りだからやってきたんだろう。
子供たちはそう結論付けたらしい。
「雨すごいね」
「うん、一晩やまないかもね」
「おうち帰れるかな」
「朝になったら帰れるよ」
「朝までどうすればいいかな」
「朝が来なかったことはないよ」
子供たちの不安に、見たことのない子供が答えていく。
不安は少しずつ解消されていく。
「大丈夫、学校は頑丈だから、雷なんかじゃ壊れないよ」
最後の子供の質問に、彼はそう答えて、
にっこり笑って見せた。
子供たちも、笑った。
いつもと違う学校が、
子供たちの気分をたかぶらせている。
雷は相変わらず大きな音を立てるし、
雨は一向にやむ気配がない。
彼は、すっと立ち上がった。
「そろそろいいかな」
「何がいいの?」
「空の獣も、十分遊んだろうから」
「そらのけもの?」
彼は、振り返って、ほほ笑んだ。
「僕は空に帰らなくちゃ」
子供たちの誰もが、反応できなかった。
彼は窓を開けて、
雷が大きく鳴って、
そして、見たこともない獣が、彼を乗せていって、
あとには水浸しの廊下と、大きく窓が開いていた。
誰も彼の名前を知らない。
けれど、この経験をした子供たちは覚えている。
空には獣がいて、
それを操る少年がいるのだということ。