怪談:こよみ


暦の上では。

肌に感じる季節があって、
それと一緒に、暦というものがあって。
暦の上では夏だというのに、
肌の季節は夏じゃないなんてことはよくあって。
ついでに、スーパーや百貨店の売り出しは、
かなり先取りしているから、
いったい、どの季節を信じていいのやら。

暦。
みんなで使うもの。
カレンダーなんかのレベルだと、
今日は何月何日というのが一緒の認識でないと、
まず、いろいろ話にならなくなる。
それだけ、暦は重要だ。

僕は、どことも知らない田舎にドライブに行って、
そこの神社かお寺だったかな、
いや、立ち寄ったお店だったかな。
本当に、思い出せないんだけど、
今、僕の部屋には独特の暦がある。
どこかの田舎で使われているらしいんだけど、
どこにドライブ行ったかわからないので、
どこかの暦、でしかない。

星をもとにしたのかな。
それとも数字かな。
いろいろな要素が複雑に絡み合ってる暦で、
最初の内は難解だったけど、
解いていくと、これほど使い勝手のいい暦はないと思えるようになった。
大安とか仏滅が、普通の暦にあるように、
周期だけでなく、
大体こういう理由があってこの日は良き日。
などとあるわけである。
それを解いていくのが、すごく楽しい暦だ。

僕は暦を読み解いていって、
いろいろなことをわかったつもりになった。
それでも、
確か、暦を渡してくれたおばあさんだと思うんだけど。
よみいたりの日にまた来なさい、だったかな。
そんなこと言っていた気がする。
よみいたりの日はもうすぐなので、
また、あの田舎に行かないといけないなぁ。
ナビで出るかなぁなどと僕はそれなりに困っていた。
よみいたりの日だけは、僕が読み解いてない要素の一つなんだ。

よみいたりの日。
いったいどんな日なんだろう。
どうして、その日に行かなくちゃいけないんだろう。

よみいたりの日になって、
ドライブを始めてから、僕は思い至った。
黄泉到り。
つまり、黄泉に到り。
つまり…

ブレーキが、効かない。
つまり…


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