怪談:はじまりはトレーニング


僕は貧弱な学生と思ってほしい。
いじめられているわけじゃないんだけど、
なめてかかられているなぁとは思う。
そんな僕は、
トレーニングを始めた。
みんなに見つかると馬鹿にされる気がして、
小さなジムに通って、
体を鍛えることにした。

町の路地にある小さなジム。
はげたおじさんが指導をしている。
僕は頑張って自分を鍛えるけど、
先輩たちの足元にも及ばない。
僕は身体のあれこれなんてわからないけど、
なんというか、
スポーツや、ボディービルとは違う筋肉。
戦う人の筋肉のつき方をしている気がした。
先輩のような筋肉を目指しているんだけど、
僕はまだひょろひょろ。

先輩たちは気のいい人たちで、
ひょろひょろの僕を馬鹿にしたりしない。
自分も生まれたころから筋骨隆々だったわけでなく、
鍛えてここまでたどり着いた。
そんなことを話してくれる。
何かを守るために強くなった先輩もいた。
強くならないといけない理由があった先輩もいた。
僕は未熟なりに、
そうして強くなるものだと思った。

ただ、先輩たちは仮名なのか、
いろいろな名前で呼ばれている。
鬼退治の英雄の名前だったり、
戦国武将の名前だったり。
そんな風に強くなりたいと思っているのかな、
と、思ったけれど、
はげおじさんの言うことには、
このジムには本当に強くなりたい連中が来る。
時空を超えて、な。
などと言われ、僕も混乱する。
それじゃみんな本人なのかな。

おじさんは笑ってごまかしたけど、
そういわれると、先輩たちの身体には、
命をかけたことの重みがある。
そんな風に強くなりたいと僕は思う。
僕が歴史に名を残せるかは別として、
守りたいものを守れる強さ。
ありがちだけどそんな風になりたい。
先輩たちのように、なりたい。

英雄がトレーニングしている小さなジム。
僕はそこから始まる。


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