燃えるような恋
人生の春来たり。
私は燃えるような恋をしている。
気まぐれにやってきた海で、
私は恋に落ちた。
人が頻繁にやってくる海じゃない。
それこそ、海水浴客ならよそに行く。
さびしい海、ただ、きれいな海。
潮干狩りのシーズンはとっくに終わって、
海水浴シーズンだというのに、
この海にはあまり人がいなくて、
私はじっと海が鳴っているのを聞いていた。
日差しは強くて、
長時間いたら海に食べられるような気さえした。
私はそこに、ひとりの異性を見た。
白い服を着ている。
日差しの見せる陽炎かとも思った。
日差しは白く輝いていて、
海は青く限りなく。
その間に人がいるのならば、
きっとこんな異性なのだろうと思う。
その人は振り向き、笑った。
「春では、こうはいきませんね」
その人は、言う。
「この季節だから、ぎらぎらしていて、いいんです」
波の音が鳴っている。
「何もかもを燃焼させるようで」
日差しは白く強く。
「でも、人生の春は、こういうときに来ると思うのです」
その人は、また、笑った。
白い異性の言うことを、私は夢うつつで聞いていた。
私は。
異性の手をとりたかった。
強くそう思って、歩き出した。
めまいがする、異性は遊ぶように離れるように。
ふらふらと、私は異性を求める。
あなたが欲しい。
私を燃焼させるほど、恋焦がれる。
理想はあなたなんです。
どんな異性よりも魅力的なんです。
私の中で私の何かが、狂ったように花咲く。
春じゃ春じゃとわめいている。
海の鳴るのも聞かずに、
異性の笑顔を追って私はふらふらと歩く。
幽霊だろうか。
幻だろうか。
何でもかまわない。そう思っていたのに。
「日差しに当たりすぎましたね、少し休みましょう」
あなたは私の手をとって、
現実へと引き戻して見せた。
日差しが私を燃焼させたのか。
私は内側を焦がすような恋をした。
じっとしていても、私は消耗する。
会いに行かなくては。
強い日差しのあの季節に、夏の午後に。
恋で私が燃え尽きてしまう前に。