サクラサクまで
春と修羅。
読んだことないけれど、タイトルの感じは好きだ。
修羅は鬼だったよね。
春は、修羅が走っているものなんだと思う。
だから、春はきれいで一瞬なんだと思う。
僕は受験生だ。
学校で知識を詰め込んで、
塾で詰め込んで、
帰りに肉まんをお腹につめて、
僕の中身って一体なんなのと、たまに考える。
考えても、知識はそれに答えてくれない。
兄さんが言ってたっけ。
知識は確かに必要だ、でも、それを使いこなすのは、知恵なんだよ。
僕はいまだによくわかんない。
けれど、どっちもあるといいということは、わかる。
分厚いコートを羽織って、
変な時間に家に帰ってくる。
塾に通っているからしょうがないけれど、
本当にそれでいいのかなと思う。
兄さんは、僕が帰ってきたことに気がついたらしい。
そっと部屋のドアを開けて、僕を手招きする。
「寒かったろ?部屋あったまってるよ」
僕は兄さんの部屋に転がり込む。
年の離れた兄さんは、
いつも微笑んでいて、
たまに困った顔をする。
いろいろ家庭の事情があるんだけど、
それはとりあえず置いといて、僕は兄さんが好きだ。
「兄さん、僕は何になったら喜ばれるかな」
僕はいつも持っていた疑問をぶつける。
「そういうこと考えてるのか?」
「うん」
兄さんは、困った顔をする。
「とにかく、何かの鬼になってみたらどうだ?」
「鬼?」
鬼は喜ばれないと僕は思った。
それを兄さんは感じ取ってくれたらしい。
「強く優しく恐ろしい、修羅であれ。俺ならそう言うさ」
僕は黙ってしまう。
両親が喜ぶとも思えないし、
学校でなんと言われるかわからない。
どうすればみんなに納得して喜んでもらえるか、
僕はそれを聞きたいのに。
兄さんは、僕の頭をなでた。
「俺たちが何しようが、春はきっと来る」
「うん」
「なら、俺たちが出来ることって、待つんじゃなくて攻めることだ」
「攻める?」
「修羅のように生きる」
兄さんはきっぱりといった。
「本当に大切なもののために、強くなる。修羅のように、生きるんだ」
兄さんは、自分に言い聞かせているかのようだった。
春はまだ遠いけれど、
僕は、本当に大切なものを考え直すことにした。
サクラサクそのときに、僕はその答えのかけらも見つけているだろうか。