まんじゅうこわい


誰が呼んだか饅頭広場。
青龍路の奥。
いつもぐつぐつ何かを煮込んでいる大鍋の近く。
いつ作ったかわからないけれどホカホカの饅頭が置いてある。
近くには中華料理のメニューなんかがあって、
一体誰が作るんだとか、
一体いつ作られた饅頭なんだとか、
そんなことにいちいち突っ込んでいたら、このクーロンでは疲れてしまう。
おいしければいいじゃないか。
お味のほうは、はてさて。

饅頭広場は、どこの店にも属していないというと、驚かれる。
どこかの点心屋の道楽かとも思われるが、
そんなこともなく、饅頭広場はクーロンができたときからそんな風に、
大鍋のそばにある。
ただ、どこかの点心屋がここに店を構えたらいいかなとつぶやいていたこともある。
大通りからさほど離れているわけでなく、立地条件は悪くない。
職人が作る点心が、この饅頭広場に並んでいたら。
それはそれは絵になる光景だろう。

不確かな噂ではあるが、付け加える話がある。
それは、饅頭広場に饅頭があるのは、
桃児ならぬ桃爺に、おそなえをしているという噂だ。
桃児を知らない人に説明をすると、
過去のとある時代に現れた物の怪で、
「くってやるくってやる」と、特徴的にしゃべる物の怪だ。
さらに桃爺であるが、これはちょっと違って、
人が集うところに現れて、そしらぬふりして物を食べている老人であるという。
いつの間にかいて、みんなとともに物を食べて、
笑い、歓声を上げ、踊る。
桃爺は、クーロンの大騒ぎの中で、何かを食べているという。
それは、大騒ぎに寄ってくる邪気だったりするともいい、
邪気を食っている、邪気払いの桃爺に、感謝の饅頭なんだという噂だ。

饅頭広場がどこの店でもないのは、そんな噂の所為かもしれない。


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