アイボール
青龍路の奥。店を通り抜けたり饅頭広場を抜けたしたさき。
眼球を売っている眼科がある。
大黄眼科といい、眼球を様々売っている。
眼球の付け替えが簡単に出来るのも、この世界ならではだ。
人はファッションのように眼球を付け替える。
ポンというクーロン住人のおじさんは、
ずいぶん前にモニター男の掃除を大掛かりにしたことを思い出していた。
モニター男とは妄人で、
モニターのことを考えているうちに、
心も姿もモニターであると思い込んだ、おかしな存在だと思ってほしい。
ポンおじさんは、眼球を多少偏愛している。
眼球は、一番素直な器官だと思っていて、
眼科によく足を運び、眼球をきれいにしていろんなものを映すのが大好きだ。
モニター男は、そんなポンおじさんのために、
いろいろなイメージを映し出してきた。
でも、悲しいかな、モニター男の画面部には、塵がたまる。
ポンおじさんも掃除をした。
じっと画面を見つめて、目がとけるほど画面を見つめて、
眼球がとけては、眼球を交換して、
またモニター男の塵を掃除する。
何度も眼球はとけて、眼科の床に染み付いていった。
ポンおじさんは、さすがに限界を感じ、
モニター男の掃除をクーロンの誰かに任せたこともあった。
ぎらぎら光るモニターをみんな見つめるのだけれど、
不思議とポンおじさんのように目はとけない。
そのときは確か、何か景品のような物まで準備した気がする。
何年前だろう。
ポンおじさんは眼で遠くを見る。
モニター男の美しい景色は、
眼科の床に染み付いた眼球の残骸が知っているかもしれない。
残骸すら見えないかもしれないけれど。