地産代理
たいてい誰もいない不動産屋。地産代理という店がある。
不動産。この町には賃貸物件がある。
店だったり、アパートの部屋だったり、
そういったものを取り扱っているという名目の店だ。
一応インフォメーションはあるけれども、
連絡手段は直に会ってというわけでもないので、
いつもここはがらんとしている。
会わなくても連絡は取れる。
そういう道具というより、そういうシステムがある。
まぁ、そういう世界でそういう町だと思って欲しい。
この町の不動産を担当しているのは、
姿が少しばかり変わっていると聞く。
まぁ、この町の変わっている、は、
よそとは基準が違うので、あまり当てにはならない。
少々ファンキーだという表現を聞くが、
何がどうなってその表現にいたるのか、
わかる人はクーロンの古参くらいなものなのかもしれない。
不動産。文字通り動かせないもの。
その場所に染み付いたものまでは、
なかなか流すことは出来ないと聞く。
思い出を流す劇薬なんてのが、あればまた別なのかもしれないけれど、
ないのだからしょうがない。
この町に店を部屋を構えるということは、
規約のほかに、この場所には過去がありますがよろしいですかと、
言われているようなものかもしれない。
過去がある、それは当然なのだけど。
染み付いた思い出が、目に見えて具現化するわけじゃないけれど、
感覚の琴線にたまに触れることがあるかもしれない。
それは不快であるか、心地よいものであるか。
それは、場所との相性かもしれない。
場所と誰かをつなぐ。
地産代理はそういう店だ。