お祭りの記憶
メイニィは、剥製屋の隣の階段を上がって、
廣東路に出ようとしていた。
その通りにはすぐに、男人街がつながっていて、
いろいろなお店があるとメイニィは聞いている。
ミスター・フーはどうしているだろうか。
悪いことを考えているはずとメイニィは思っている。
それから、姉のマオニィはどこにいるだろうか。
鳴力(ミンリー)なるものがあれば、双子同士共鳴しあうと聞いたが…。
あいにくとそういうものは感じない。
とにかく、人が集まるほうはどっちだろうか。
メイニィなりにそれを探している。
そして迷っている。
ぱんぱんぱぱぱぱん!
軽快な爆竹の音。
メイニィは階段の途中で振り返る。
たくさんの人が、いつのまにか、お神輿をかついでいる。
かけ声熱く。熱気は激しく。
狭い階段をよいしょよいしょと彼らは上ろうとしている。
かついでいるものは顔を真っ赤にして。
かついでいないものも、がんばれぇと声を上げる。
ぱんぱんぱぱぱぱん!
爆竹が軽快に鳴る。
メイニィはいつしか、お神輿の集団にもみくちゃにされる。
右に、左に、メイニィの視界は揺れ、
その視界の端に、
「姉さん…」
ぱんぱんぱぱぱぱん!
魔法が解けるように、
爆竹の音とともに、お神輿は消えた。
「姉さん…」
メイニィは確かに見た。
姉のマオニィの姿を。
けれど、それが、本当、の、ことだったのか。
妄想かもしれないと、メイニィは思い、立ち尽くす。
火薬のにおいと、熱気の残滓。