以前あった店


男人街の比較的古株の針屋という店の近く、
オートバックスバニーは、イエローハットと立ち話をしていた。
バニーは、噂に聞いたのだが、
針屋という店には動物がなにやらいるとかいないとか。
はす向かいがパンダだからだろうか。
いや、クーロンにそんなことがあるわけないと、
バニーは自分にいって聞かせる。
イエローハットは、バニーのそんな話を聞いて、
「何で動物に引っかかるのかね?」
と、いたっていつもの煙に巻く紳士口調で訊ねる。
「だってさ、動物だよ。僕はウサギだよ」
「知っているよ、バニー」
「僕は、うさたま屋を探しているんだ」
「ほーぅ」
イエローハットは、頭のへんてこ黄色帽子をかぶりなおし、
「エイディーから聞いた話だけどね…」
と、語りだす。

この針屋の主人は、非常にサイコロの神様に愛されていて…
だから店が持てた、ここまではいいかな?
その前の店、これは魔女の店とあるね。
良い魔女の店だったのだよ。
服を売っていたと聞くよ。
その前。これはエイディーの情報だがね。

と、イエローハットは言葉を区切り、
「その前が、うさたま屋だったと言う怪情報だよ」
バニーの長い耳がぴくんと反応する。
わかりやすすぎる反応だ。
「うさたま屋は、もう、ないの?」
「あるといえばあるしないといえばないという…」
「どっちなんだよ!」
バニーは詰め寄る。
イエローハットは、やれやれという顔をして、
「本当にうさたまのことになると、見境がないね、君は」
「だって」
「煙に巻く黄色帽子の噂を、誰が信じるんだい?」

バニーはきょとんとしてしまう。
「まぁ、針屋のクマちゃんもいいものらしいよ」
と、イエローハットは露店街へと歩いていく。


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