やる気のない風水師
見習い風水師のシアンは、邪気を探していた。
邪気あるところに物の怪とか鬼律とかがいる。
邪気をはらえばいい。基本は。
邪気がよどまないような町づくりをするのも、
風水師の仕事だったような気もするが、
とりあえずシアンのような若造には、
そんな大きな仕事が出来るはずもない。
だから、邪気を見つけては、払っていく。
それくらいしか出来ない。
シアンは露店街を歩く。
活気があるのかないのか。
まだ空きがあるというのに、空きがあるからか、
置いてある品物の個性的なことといったら。
これがクーロンかと、シアンはしばし露店外を物色する。
露店街の端っこから、シアンの感覚に、邪気特有の気持ち悪い気配。
「ここにもか」
シアンは振り返り、邪気を払うべく走り出そうとして、
突然邪気の気配が途絶えたので、何事と思う。
足を一度止め、考え、それでも、何が起きたのか確認しなければと、
シアンは露店街の海側にやってきた。
テーブルがひとつ、椅子がいくつか。
椅子に座っている、ぼんやりした男性。
「よぉ」
男性は、のんびり声をかけてきた。
「俺はケージ。風水師さ」
「シアン。見習いの風水師です」
「そっか、あんたも邪気払ってるのか」
ケージはあくびをひとつ。
「よどみやすい場所をつかめれば、後は適当に払うだけでいいさ」
「…ここが?」
「そ、ここにいる奴は、俺が適当に払っとくよ。あんたはよその掃除をしてくれ」
「…大丈夫なんですか?」
シアンはたずねる。
ケージはあくびをまたすると、
「まぁ、人生ってのはゲームだ。俺なりにゲームを楽しんでるのさ」
あくび涙をちょっと浮かべ、ケージは笑う。
やる気があるのかないのか。
シアンにはわかりにくかった。