集う広場
通称パンダ広場。
大きなお祭りのときには、たいていここにみんな集う。
小さくても、場所をとるようなときには、
たいていここが使われる。
そうでなければ西のサンドボックスといわれる場所で、
自由に集まることもある。
ここは、個々としてのクーロン住民も、訪れる客のような異邦人も、
みんなもこもこと溶け込むような場所。
個が溶け合い、不思議な形になる場所。
パンダ広場には、廟というか、社というか、
立派な建物があり、そこを背景にして画像を作る人も少なくない。
画像映えがするのだろう。
一体何を祭っているのか、
知る人は少ないし、本当は誰も知らないのかもしれない。
マオニィはその廟の前にいた。
自分の名前だけは覚えている。
ただ、その先が思い出せない。
何もない自分というのは、なんと、心細いものか。
マオニィには記憶がない。
ただ、気がついたら、この町に迷い込んでいて、
何かを必死になって探している。
その何かとは本当に存在するものなのだろうか。
ありえないものを探していないか。
助けて、助けてと、マオニィは助けを求める。
集まるところなら、あんたの探しているものがあるだろうさ。
そういったのは、誰だったか。
「エイディーだよ」
空からマオニィを見下ろして、くすくす笑う子供。
「僕はトラだよ。あんたの記憶のそいつはエイディーさ」
オモチャにぶら下がったトラという子供は、
マオニィをしげしげ見て、
「まぁ、取って食われないように気をつけてね。危険な奴もいないこともないさ」
オモチャが高度をあげて、
トラ少年はどこかに行ってしまった。
マオニィはわからないまま、歩き出す。