噂と風水師
メイニィは、パンダ広場にいた。
なんとなく、気がついたらここに向かっていた。
ここは、お祭のときや、
ちょっと昔ならライブなんかが行われていたらしい。
今はその残響も聞こえなくて、
静かにパンダの乗り物なんかが置いてある。
ここに人が集まるのだろうか。
確かに、広いが静か過ぎる。
まるで誰も何もいなくて、メイニィ一人みたいだ。
集まるところなら、あんたの探しているものがあるだろうさ。
そういったのは、誰だったか。
「エイディーだな」
メイニィは振り返る。
気配は今の今までなかったはずだ。
でもそこには、あくびをする若者が、いる。
「俺は、ケージ。このあたりの邪気払いしてる風水師だ」
「私は…」
「メイニィ。噂だけは聞いてる」
「誰が? 噂を?」
「エイディーだよ。たいていのことは知ってるさ」
「じゃあ、姉のことは。マオニィといいます。ご存知ですか?」
「俺は知らないよ。ただ、この町は安全なだけじゃないさ」
メイニィはその意味を考え、
「ミスター・フー…」
と、つぶやく。
存在しないものを存在させるという、
メイニィの思うところの悪者。
メイニィは考える。
もしかしてミスター・フーが、姉を狙っているかもしれない!
なんだかわからないけれどそんな気がする!
これが鳴力か!
「ちがうよお嬢さん」
思い込んでいたメイニィに、あくびまじりの声。
「思い込みは人の視界を狭くするよ。いろいろ考え抜くのがいいさ」
メイニィは食って掛かろうとする。
ケージという風水師は、ふにゃっと笑って、
「小さくても、自分で答えを見つけるのがいいのさ」
あまりにも邪気ない笑顔だったので、
メイニィの怒りがすぅっとなくなった。
邪気をはらう風水師は、こういう芸当も出来るらしい。