冥途の夢
メイニィは、クーロンの町の北のほうにある、
温沙皇宮酒店という看板の出ているところにやってきた。
ここは、その昔メイド喫茶をやっていたという、
メイニィが思うにいかがわしい場所だ。
きっといろんなことをさせていたに違いない。
言葉にしたらとってもよくないことを、いろいろと!
メイニィの中で、そういう悪いことをするのは、
ミスター・フーだと結び付けられる。
あれはきっと悪いことをする奴だと。
きっとメイド喫茶の売り上げは、
ミスター・フーのところにいっていたに違いない。
ああ、なんて悪い奴。
メイニィの思い込みは暴走する。
メイニィはそんな半ば言いがかりに近いことを考えながら、
温沙皇宮酒店の入り口から中へと入っていった。
途中、めまいがしたような気がした。
「おかえりなさいませ」
ああ、メイドが出迎えてくれるのか…
そう思ったけれど、違和感。
「おや、ぴちぴちのお嬢さんだよ」
この、声は、メイドというには違う。
「あら、あたしも何十年か若ければねぇ」
若ければ?
メイニィは声の違和感の正体に気がつく。
メイドというメイドはすべて老婆で、
メイドというより冥途だ。
老婆がメイド服で出迎え、
にやぁと笑う。
まるで、メイニィもいずれこうなるとでも言いたげに。
メイニィは、不意に風を感じた。
気がつけばメイニィは一人になっていた。
老婆のメイドは一人もいない。
「…夢?」
老婆が楽しげにやっていた冥途喫茶。
そんなものでミスター・フーが悪いことをしているのは、
なんだかちょっと違う気がした。
がらんどうに風が吹き、メイニィの頭をちょっとさます。