窓男


見習い風水師のシアンは、
西城路の近くを歩いていた。
ドアを開け、奥の金網を潜り抜け、
見慣れないところに出た。
そこは、クーロンからひょいと外に出たような空間。
位置的にはクーロンの北の方、
地図で見るところの、クーロンの外周あたり。
道を間違えた、何もないところかと思ったが、
何か気配がある。

シアンは歩き、
彼を見つける。
窓のことを考えていたであろう姿。
窓男だ。
一発で窓だとわかる姿は、この町ならではだ。

思考が途切れていて、
物に変わっていないかと、とりあえずシアンは話しかける。
窓男はちゃんと答えてくれる。
一応妄人であり、窓というものになりきっていないらしい。
いや、なりきっているから妄人?
とりあえず、物になってはいないらしい。

邪気に当てられ続けると、
人も物になってしまうという。
扇風機になったとかいう風水師のことを、
シアンはよく聞いたものだった。

しかし、と、窓男の近くにいてシアンは思う。
この近辺、何か別の気配もあるような気がする。
人だろうか。
妄人とも邪気とも、人ともなんとなくずれている、
それは生きているものだろうか。
そもそも生きるというのはなんだというのだろう。
窓男が笑っている。
生きるという定義を、柄にも無く考えるシアンを見て。

こいつなんでも知っているのかな。
シアンは窓男を見ながらそんなことを思った。


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