西城路
オモチャマスターのトラ少年は、西城路をオモチャで飛んでいた。
クーロンに最初からこの町があったわけじゃない。
何もかもがいつの間にかで、
気がついたら存在している。
店がいくつか入れ替わったりして、
それこそ、最初からあったような顔をして。
トラはオモチャを止めて、ネオンに腰掛ける。
飽くなき欲求と悪無き世界。
本当の悪なんて、ゲームのようにわかりやすくいないもの。
みんないい子なわけじゃないさ。
でも、欲がすばらしいものを生み出しているのは事実だと、トラは思う。
そして何より。
生きることはゲームだ。
この町の住人は、
最初からここにいたような顔をしている。
トラが思うに、この町がみんなを飲み込んでいる。
飲み込んで、この町の空気をまとわせているんだ。
だから、相当な新人でもない限り、
たいてい最初からいたような顔をしている。
トラのモットーは「人生はゲーム」だ。
この町は、そんなゲームのひとつだとトラは感じている。
ただ、こんなに平和なゲームもあるまいとも思う。
お店経営ゲームでもないし、
町を歩くのがスリリングなわけでもない。
環境を見るだけのゲームでもない。
じゃあどこがゲームなんだといわれるかもしれない。
トラはひとつ答えを用意している。
「生きた町の住人になる。それってゲームだと思うよ」
トラにとっては、
この町は大掛かりなオモチャだ。
オモチャで、ゲームで、生活で、人生だ。
西城路のネオンの上、
トラはこの町を動かす原動力を思う。
人が生きること。
欲も希望も全部ひっくるめて、
それがすなわち、この町のゼンマイかもしれない。