とある扉
チー婆さんという人物がいる。
チーは麻雀が好きなおばあさんだ。
このクーロンに住み着いて早幾年。
祭りがあるわ、路地が出来るわ、
チーが思うに、なかなかこの町は精力的だ。
いわゆるエネルギッシュだ。
チーは、元気なおばあさんを体現している人だ。
あっちこっちによく出かけ、
祭りとあらば知らない爺さんとも飲み明かす。
桃爺なんていっていた爺さんもいた気がするけれど、
たのしければ、それでよしだ。
そんなチーが見張っているわけでない扉が、ひとつある。
見張っているわけでないけれど、ちょっと気になる扉。
ただのちょっと派手な扉かもしれないけれど、
気になるのは、そこにやってくる連中は、みんなして海老臭い。
海老のにおいのする奴が決まってやってくる。
チーはなんとなくそこを、海老扉と呼ぶ。
そして、とりとめもなく考える。
海老扉の向こうには海老人の海老基地があって、
クーロンを海老でうずめようと、日々計画が練られているに違いない。
海老人は、とにかくこのクーロンを海老臭くしようとしている。
そう、多分海老のにおいは、海老を受け入れるための準備なのだ。
そのうち海老扉から、
クーロンを埋め尽くすほどの海老が山ほど出てきて、
海老人がこのクーロンを征服するに違いない。
チーはそこまで考え、
あるわけないか、と、考えをぽんと消してしまう。
チーの頭の中で海老人が絶滅する。
しかし、海老のにおいのする連中はいるわけだ。
チーは海老扉という扉を、
見張るわけでもなく見ている。