露天人形


見習い風水師のシアンは、見事に迷子になっていた。
ナビもいないこのクーロンにおいて、
何か道標がないと、訳がわからなくなるのも早い。
それが醍醐味だと、ちょっと前にすれ違った少年が言っていた。
オモチャを操る少年だった。

そんな迷った路地で、
シアンは変に派手な箱を見つけた。
邪気の気配はないようだけど。
ゴミ、ではないとなんとなく思う。
何かの意味があって、ここにあるに違いないとは思う。
しかし、何の意味があるんだろう。

「露天人形の箱だ」
シアンの後ろで男の声がした。
シアンが振り返ると、この町にまだなじみきっていない、
色つき眼鏡の男がいた。
彼はロックと名乗り、
クーロンズゲートの思い出を追っているという。
「そこにも露天人形がいたから、ここにもあると思って」
「露天人形ってなんなんだ?」
シアンはたずねる。
「うーん、進むべき道の道標?」
ロックはそんな曖昧な答えをする。
シアンも納得する答えではないが、
いかんせん、この町は納得できることが少ない。

ロックは一通り露天人形を見て、
満足して去っていった。
箱からひょこっと出てきて、
メッセージを流していくという人形。
その言葉に道標を感じるのならば、それもありだし、
意味のないものと感じるのならば、それもありだ。

これからどうしたらいいだろうか。
シアンはだめもとで露天人形を呼び出す。
出来れば、正義の風水師になれと、言われたいなと思いながら。


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