鏡
メイニィは、鏡を売っている店にやってきた。
この町でもかなり高いものが置いてあるという噂を聞いてである。
何かを期待したわけではない。
ただ、それが鏡というのを聞いて、何かが心に引っかかっただけだ。
たいした意味はないはず。
メイニィはそれを、悪者のミスター・フーの予感の所為だろうと、
片付けようとしたけれど、うまくいかない。
メイニィはじっと鏡を見る。
高い鏡ではないのかもしれない。
鏡屋とか言う高いものより、
メイニィは鏡に釘付けになった。
鏡の向こうに、メイニィがうつり、その奥に、
「姉さん?」
呼びかけると、鏡の奥から、
双子の姉が反応をする。
水面にうつる影のように、
マオニィは鏡の向こうに存在し、
まったく同じ姿で、
メイニィの前にうつっている。
「あなたの妄想。私の記憶」
「私の妄想。あなたの記憶」
双子は鏡を介して記憶と妄想をゆるゆると混ぜる。
そのときメイニィはマオニィでもあり、
マオニィはメイニィでもある。
虚と実は美しく調和し、
メイニィは再び、このクーロンに戻ってくる。
鏡に映るのは、マオニィでもあり、メイニィでもある。
この鏡で二つは混ざる。
存在しないものを存在させる。
ミスター・フーがもくろんでいたこと。
虚像の姉かもしれないけれど、メイニィがいることで姉もいる。
メイニィの妄想かもしれないけれど、
鏡の像のように、姉は、いる。
それは、少し何かの軸のずれたところで、生き続けている。
軸が交わるところを双子は見つけた。
そこでは、陰も陽も、妄想も現実も混じる。
混じった果てに全てが存在する。
存在、する。