俺は時の檻で嘘をつく 3月5日
3月4日はどんちゃん騒ぎの片づけで店が終って、
部屋に戻って休んで、
3月5日は昼過ぎから始まる。
早起きを試みたこともある。
なんせ2万回繰り返している。
たいていのことは試してみた。
早起きは三文の得というけれど、
小さい得はあった気もしないでもない。
やっぱりそれより、休みたいしまどろんでいたかった。
さて、昼過ぎ。
今までにない夢を見て目が覚める。
びしょ濡れの不良娘の夢。
そう、昨日の不良娘だ。
タオルを渡したら、キョトンとしたあと、
ごしごし顔をふいて、
長い髪がかかってない顔が、割ときれいだったなぁと。
目が、すごくきれいだった。
多分昨日も同じこと思った。ピュアな目。
この部屋から外も、テレビも、
全部2万回以上同じことを繰り返している。
いや、繰り返しに巻き込まれているのは多分俺なんだけど。
みんな、普通に3月14日に脱出しているんだけど。
普通じゃないのは俺の方なんだ。
俺はため息。
不良娘はどうしたかな。
ちゃんと雨風ないところで雨をやり過ごせただろうか。
不良が家なしなのはよくあることだけど、
変な薬だの、売春だの、
そういうのに染めちゃいけないとは思った。
「俺ってまともー」
まともじゃない、のになぁ。
とりあえず起きよう。
そして、何か食べよう。
昼酒はやめた方がいいとして、
さて、どうするかな。
起きだして、呼び鈴。
「はいはいなんですかーっと」
起き抜けで頭が回ってなかった、そう思ったのは扉を開けたあとで。
玄関の扉の向こうには、不良少女がいた。
汚れて濡れたままで、明らかによくない。
「店に、聞いたら、ここにいるって言ってた」
「いろいろ後回しだ、シャワー浴びろ、一日この格好でうろついてたのか?」
「うん。友達いないし、家からは絶縁」
俺はため息をつくしかなかった。
不良娘はシャワーを浴びて飯を食うと、
俺のシャツ羽織って、気持ちよさそうに寝てしまった。
呼び鈴から、どれもこれもループにはなかったこと。
不良娘の洗った髪に触れてみる。
さらさらと健康的で、いつまでも触れていたいと思った。
いつまでも。