俺は時の檻で嘘をつく 3月6日


3月6日は曇り空。
不良娘はなんだか居ついてしまった。
着ていたセーラー服?らしいものを、
クリーニングに出す俺の気持ちも考えてくれ。
今までこんなこと考えたこともなかった。
クリーニングに出しても、
3月14日にはループして、3月4日に戻ってしまうんだから。

「お兄さん、ユウヤっていうの?」
不良娘が訪ねてきた。
「ああ、うん。一応本名だ。そういうお前は?」
「タマキ。漢字は環状線の環」
「かんじょうせん?」
「ええと、難しい方の漢字で、輪を意味するの。円環とか」
「ふぅん、それでタマキね」
「ユウヤはどういう字を書くの?」
「ホストの方では憂夜。憂いの夜って書く」
そこまで話すと、タマキは大笑いした。
「すっごいだっさい」
「ほっとけ。本名の方は優しいに弥生の弥で優弥」
「響きがホストなのに全然違っちゃうねー」
「まぁいいだろ」

自分の名前のことを話したのはいつぶりだろう。
小学生のころは、何やらいろいろあった気がするが。
その、学生というもの自体、
遠く遠くになってしまった。
2万回以上ループしていなければ、
俺はまともに21歳程度のはずなんだが、
さて、ループはどう数えたものなんだろうな。
そもそも、俺どうやってループに巻き込まれたんだろうな。
あー、疑問持つのって久しぶりの気がする。

「ユウヤ」
「うん?」
「何か考えてた?」
「今までのことを思い出そうとしてやめた」
「なんで?」
「説明しづらい。そのうち、な」
「わかった」
タマキはあっさり納得して、
「ところでユウヤ、ホストのところに転がり込む女子高生は、不良?」
「そうだな、不良に位置していい」
「よし、あたしは今日もちゃんと不良だ」

ちゃんと不良、の、語感がおかしくて、俺はしばらく笑った。
ピアスと長髪と長いスカート、
そして、ホストのところに転がり込むと、不良。
タマキの不良観が、あまりにも健全すぎて、俺は笑った。

腹の底から笑った。
しまいにゃタマキも巻き込んで笑った。


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