俺は時の檻で嘘をつく 3月13日
3月13日。
14日を俺は迎えることができるのか。
この日が終ってまた、3月4日からのループなのか。
俺はつかんだ思考の尻尾から、
正解を見つけ出さんとあがく。
考える。
歩く、考える。
座る。
悩む。
頭を抱える。
思い出す。
ありとあらゆることを、このループの中でしたと自負していた。
けれど、俺の中にはまだ使ていない部分がたくさんあって、
まだこんなに使っていないのに、
よく、自殺考えたよなと、自分のことで可笑しくなる。
泣きたくもなる。
もう、これ以上が考えられないと、泣きたくなる。
笑いたくもなる。
もう5億回ループをするか?あっはっは!
ノートに今までのことを書き殴り、
突破口を探す。
時間はどんどん過ぎていく。
焦りばかりが募っていく。
「ユウヤ」
一瞬、自分のことを呼ばれたと理解できなかった。
それほど考えに没頭していた。
「ループの世界を終わらせたいの?」
「ああ」
「カラスが言ってたよ、それにはあたしを…」
「だめだ」
タマキの言葉をさえぎって、
「二人で明日を見るんだ」
「どうして?」
「どうしてなのかは、わからない、けれど」
俺は一つ一つ言葉にする。
「タマキをこの世界においていきたくない」
「うん」
「そして、タマキのいないループは嫌だ」
「そうなの?」
「君と生きていきたい。俺はそれだけなんだ」
生きていきたいのに、答えが出ない。
どうすれば、二人分の代価が払えるのか。
どうすれば明日に行けるのか。
タマキが、微笑んだ。
「あたしも連れて行くの?」
「明日に連れて行く。絶対だ」
「不良なんて…」
「じゃあ不良やめろ。でなければ強制不良させた学校やめろ」
「ユウヤ、言いたい放題だ」
タマキは笑顔のまま泣きだした。
「タマキ。重荷は置いてこう」
俺は、そこで何か理解した。
しゃがれ声が脳裏に響く。
「それでいいのか?」
「ああ、俺にとっての重荷を二人分の代価にする」
脳裏のしゃがれ声が笑った。
「お前の2万回のループの記憶および経験、確かにいただいた」
しゃがれ声がカラスの鳴き声のように意味のないものにかわっていく。
「いけ、まだ見ぬ明日へ」