電話
ネネは無駄箱一号で適当に検索する。
何か目指すものがあるわけでもないが、
ハヤトの絵が見られないとわかると、
ネネは本当に適当になった。
匿名掲示板と呼ばれるもの、
ニュースブログと呼ばれるもの。
ネットの散策らしいものをする。
面白おかしく書いたもの。
ニュースだけを伝えたもの。
いろいろあるが、ネネはなんとなく満足しない。
ネネはあせっている気がする。
光の吹きつける先。
ネネは断片的にそんなことを思う。
朝凪の町で光の吹きつけてきたところ。
そこから先に行けば、浅海の町で言うところの、
ネネの学校まで行ける。
しばらくしてネネはまた、伸びをする。
「見つかるわけないか」
ネネはため息をつく。
『わかりませんよ』
ドライブが言葉をかける。
『朝凪の町に行っているのが、ネネだけとは限らないのです』
「そうだけどさ、ネットに転がっているわけないじゃない」
『それもそうですねぇ』
「次の朝までに、何か策が欲しいね」
『そうですねぇ』
「でも、何かを犠牲にしないとは入れないっていうのなら、考えるなぁ」
『それは嫌ですね』
「ドライブ、ちょっと頭の中読んで」
『はいなのです』
ネネはイメージする。
占い師のタミのこと、それはとても怖いこと。
代価を得ている占い師のこと。
朝凪の町にいるのではないかということ。
一通りイメージする。
「言ったこともあるかもしれないけど」
『ありがとうなのです』
「入れないようにしているとしたら、何があれば入れるだろうね」
『うーん』
ドライブが考え込む。
ネネも考える。
「ネネー!」
階下から声がする。
「ネネに電話よー!」
「はーい!」
ネネは大声で答えて、部屋を飛び出した。
ドライブが肩から転げて、机の上に着地していた。
「くがかわって人から」
「ハヤトだ」
母から電話を代わり、受話器を耳に当てる。
「もしもし」
「友井か」
「うん」
「説明しづらいけれど伝えることがある」
いつものぼそぼそ声でハヤトが言う。
「伝えること?」
「うん」
ネネはじっと待つ。
ハヤトが話し始める。
「友井は、佐川の占いのものを何か持っているか?」
「占いのもの…」
「解答のコピーとかあるか?誰かが配っていたらしいが」
「あ、あるけど」
ネネは話が読めない。
「カンニング疑惑とかって担任に言われてる話?」
「いや、ちがう」
「じゃあなに?」
「説明しづらいんだけどな」
「うん?」
「ここでないどこか、光のもとには占い師がいる」
「光のもと?」
「占いを否定するものを拒絶する光だ。吹き付けてくる光だ」
ネネの脳裏に光がうつる。
あの光かとネネは思う。
「ここでないどこか。その光を越えるには、テストの解答を持っていくといい」
「占いで得た解答だから?」
「そういうことだ。ひとまず中に入れるはずだ」
ネネは納得しかけるが、すぐにどうしてと思う。
「ハヤト、何でハヤトがそんなことを知っているの?」
「バーバに聞いた」
ネネは沈黙する。
バーバ、占い屋のバーバ。
何でハヤトがそんなことを知っている?
「ハヤト」
「いつかどこかで会える」
ハヤトはそういうと、電話を切った。
ネネは呆然と立ち尽くす。
やがて気を取り直して受話器を置く。
ハヤトはバーバのことも知っている。
それはハヤトが朝凪の町にもいるから?
戦闘区域が拡大したような町。
そんな危険なところにハヤトがいる。
ネネはどうしようかと思う。
線を辿るだけでなく、ハヤトを探さなくちゃとネネは思う。
探してどうしよう。
ネネは途方にくれた。
ネネは階段を上がって自室に戻る。
『おかえりなのです』
「うん」
『電話はなんでしたか?』
「光の吹きつける先に行くには」
『ほう!』
「ハヤトが言ってた」
『まるでネネを導くようですね』
「うん…」
ハヤトはネネの前に立っているような気がする。
導いているのだろうか。
ネネは判別がつかなかった。