水戸市役所


バスは水戸駅からのびる大通り、駅南中央通りを走る。
緑はそこかしこに生い茂っていて、
日差しに向かってどんどん自己主張をしてるかのようだ。
この大通りをまっすぐ行けば、水戸駅南口に行く。
水戸駅南口の前あたりで、駅南通り(中央通りではない)と交差していて、
交差している通りを、左折してしばらくいくと、
水戸市役所がある。
ただ、あまり大きな建物でないし、
市役所前とアナウンスがないと、よくわからない建物だ。
植物で荒らされている通りをバスはがたごとと走り、
アキは目指している市役所前でブザーを押す。

エコバスは静かに走り去っていき、
アキはバス停にいつものように残される。
通りに人は少ない。
大災害で人が減ったからでなく、
もともと水戸という町は、人が多くない。
ネオ水戸シティと、大災害のあとに改名しても、
結局、人があまり居つくことはなかった。
大災害でダメージを受けすぎたわけでなく、
もともと、水戸は自己主張の少ないところだ。
歴史の表舞台に立つことがあまり得意ではないのかもしれない。
だから、大災害後の東北や関西のように、
分権がうまくいったところとは違い、
ネオ水戸シティは、どうにも地方の田舎都市というのが抜け切れず、
ある程度復興しても、それを売りに出すのが苦手なのか、
どうにも置いてけぼりの町である。

アキは、市役所のドアを開く。
大災害前から、どうもこの市役所は地震にもろいのではないかといわれていたが、
大災害で、通常業務に支障をきたすほど壊れ、
なおかつ、植物に早速覆われ始めたのがこの水戸市役所だ。
上を見れば植物の枝。
その合間に、水戸市役所を飾っていただろう芸術品が見え隠れする。
昔は雰囲気が暗い暗いといわれていたが、
建物が壊れ、植物が市役所を覆ってからは、
俄然雰囲気が明るくなった。
いいことなのか悪いことなのかはわからないが、
花毒さえちゃんと管理していれば、
この市役所は結構植物と共存しているのかもしれない。
それを売りに出さないあたりが、水戸という町の性分なのかもしれない。


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