お仕事手続き
市役所の書類手続きが、
それなりの事件があった後でも行われる。
アキは仕事の報酬が、口座にあとで振り込まれることを確認して、
次の仕事のありなしを聞く。
この大災害後において、花の季節というものは狂ってしまっていると思っていい。
季節を問わず、花は咲くかもしれないし、
花術師が花を断たなければ、
静かに人は花毒にやられていく。
対植物窓口の係は、断たれた植物と、水戸シティの植物繁殖率を検索する。
こればっかりは口コミではちょっとしんどい。
ネットワークがあるのならフル活用したほうがいい。
でも、どうしても水戸シティのシステムが旧式なので、
(繰り返すが、役所で書類なんて使っているのはここくらいだ)
加えて、花術師はあまり電脳化していない。
ある程度の情報端末は持っているけれど、
市役所に集中しているのならそれでいいと、アキは思っている。
「そうだねぇ、芸術館をちょっと見て欲しいかな」
職員は検索した結果を見ながら話す。
アキは多分怪訝な顔をした。
芸術館には大きく芽吹くような植物があっただろうか。
「三の丸庁舎は最近大掛かりに花術師がいったから大丈夫だし」
「県庁は?あそこも桜が結構あると思うけど」
「県庁近くはさすがお役所だよ。今月分くらいは、さっさときれいにしていった」
「うーん、でもなんで芸術館?」
「現代アートと称して、植物植えているのがいるらしいんだ」
アキは顔をしかめる。
芸術は好きだけど、そいつらになんか覚悟が足りなそうな気がして、
もやもやとする。
「言いたいことはわかる。続きがあるんだ」
「続き?」
「芸術館の劇場に、大災害後から誰かがいるらしい」
「誰か?」
アキは首をかしげる。
「人じゃないと言う噂もあるが、とにかくその人を確認してくれ」
「それが今度の仕事?」
「ああ、芸術好きの助川さんには、悪くない仕事だと思ってね」
顔なじみの職員は、苦笑いする。
「実は、植物を植える現代アート作家が、半分植物化していて動けなくなっているというのもあるんだ」
「そっちはどうでもいいなぁ…」
「水戸のオブジェになられても困るんだ。頼むよ」
アキはため息ひとつ。
どうしたものだろうか。