誰の声


アキは職員の印刷したプリントを見る。
確かに芸術館の案件が話されたとおりに書いてある。
大まかには依頼は2つか。
ひとつは、現代アートと称して植物植えるやつをどうにかする、
もうひとつは、芸術館の劇場に何かいるのを確かめる。
水戸市中心街あたりだから、そんなに大きく遠いわけではない。
ただ、芸術家と称するやつが、植物になりかかっているという情報もあるし、
花毒がそれなりにあると思ったほうがいいだろう。
難しい仕事ではないが、さてとアキはもう一度考える。

後ろからひょいとプリントが取られた。
なくなったと思って、後ろを振り向くまでに、ちょっとの間。
気配はなかったはず。

「引き受けてもいいんじゃないっすか?」
さっき聞いた飄々とした口調。
武術師のソウシが、プリントを手にしてふんふん頷いている。
「警察からは、何か言われた?」
「なにも、俺、免許ありますから」
「それで、何でソウシがあたしの依頼を決めるわけ?」
「あ、ソウシって呼んでくれた」
ゴーグルをしていてもわかる、ソウシのうれしそうな笑み。
「…話し戻すわよ」
「俺も護衛につく予定っすから、ちょっと危なくても平気っすよ」
「護衛? 例の依頼?」
「そうっす」
アキはため息、どうしたらいいものだろう。
足元で猫がにゃあとなく。
アキとソウシで気が付き、
「ミトさん」
と、ソウシが言う。
「ミトさん?」
「この猫の名前っす。ミトっていいます」
「ふぅん?」
ソウシは少し何か考えて、
「ミトアタック!」
ソウシはミトを持ち上げて、アキに抱かせる。
きょとんとしたアキを尻目に、
「それじゃ、これ依頼受けてきますねー」
と、窓口のほうに走っていってしまう。

ミトがにゃあとなく。
アキはミトをなでる。
なでながら、とりあえずのことを考える。
確かに、武術師の護衛はありがたい。
あの腕の確かさから言えば、安いくらいだ。
安いくらいだと思いあたり、
どのくらい報酬あげるべきかなと考える。
とんでもないものを報酬に言われたらどうするか。
『ソウシはそんなことせんよ』
「そうなんだ」
『そうじゃ』
ふと聞こえた声と、とても自然に会話して、
アキは、はてと思う。
ミトがにゃあとないた。


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