ミトの依頼
「さて、アキさんや」
水戸光圀の電脳転生の、ミトが話す。
「このネオ西山荘に呼んだのはほかでもない」
「なんでしょう」
「ネオ水戸シティのデータベースを作っているのじゃよ」
「データベース?」
「前世で作っていた大日本史の電脳版じゃよ」
アキはわかるようなわからないような。
「花術師がいないと、こみいったところがわからなくてな」
植物の花毒が出かねない、このご時世、
アキのような花術師でないとデータが集めにくいのだろう。
なんとなく、アキはそんな風に理解した。
「ソウシはアキさんのボディーガードとして、わしが雇った」
「そうだったんだ」
アキがソウシに目を向ければ、
ソウシはうなずいた。
相変わらずゴーグルはつけっぱなしだ。
メガネのすごいのと言っていたが、
ゴーグルの画面にいろいろ表示があるのかもしれない。
「市役所の依頼をこなしながらで構わんよ」
「それで大丈夫なの?」
「大丈夫じゃ。報酬も弾むぞ」
アキは考える。
特に問題があるとは思えない。
しかし、疑わないのもどうかと思う。
そう思いながら、トビザルの出したお茶を飲むあたり、
アキは信じやすい性質ではある。
「話だけとりあえず聞かせて。具体的にやることを」
「わかった」
ミトは了解した。
視線をヤシチに回し、
ヤシチが窓を開いて送る。
仕事は、ミトの指定した端末を持って、
ネオ水戸シティのあちこちの様子を見ることに近いらしい。
ただ、場所によっては、
市役所で騒ぎを起こしたような、
ああいうのもいないとも限らない。
植物肯定派否定派、どちらも極めれば暴走する。
そういった荒事を処理するのが、
ソウシとして雇われたらしい。
アキが仕事を引き受ければ、
アキに渡される端末で、データがネオ西山荘に届く。
アキにデメリットがあるとすれば、
めんどくさいだけである。
ただ、窓に示された報酬は破格だ。
どうしたものだろう。