それなりの契約


アキは考える。
契約に違法性はないように見受けられるけど、
なんでこんなに破格の報酬が出るのか。
データベースを作るには、
少し額が違うのではないかと思う。

「悩んでるの?」
オギンが尋ねる。
「花術師にしては楽な仕事過ぎて…ちょっと」
アキは思ったままをいってみる。
「あなただから、楽なのよ」
「そうかな」
「花術師でなければ命をかけるお仕事よ」
「そっか…」
「あたしもご老公と契約してるの」
オギンは微笑む。
「ベジタリアン吸血鬼は植物にならないから」
「それで芸術館に?」
「そう、一応潜入ができるシノビ扱いよ」
「シノビ」
「古い言葉の忍者とかくノ一よ」
アキはそんなオギンをかっこいいと思う。
なるほど、シノビか。
古い書籍でしか知らないけれど、
こうやってこのご時世に忍者がいるのか。
ヤシチもトビザルもそうなのだろう。
アキは忍者とは違うけれど、
花術師として認められたのなら、
それもいいかと思った。

「ミト、…さん」
「ミトでよいぞ」
「うん、依頼、引き受けます」
「そうか、いや、そうか、よかった」
ミトが猫の顔に満面を笑みを浮かべる。
「役に立てるかは分かんないけど…」
「役に立つぞ」
ミトは断言する。
「花の歌が聞こえる、芸術を好む、そして何より素直じゃ」
ミトは列挙して、うなずき、
「わしの目に狂いはないぞ」
アキの自覚のないことを列挙されて、
本当に狂いがないのかはわからない。
アキは軽くため息をつくと、
「契約、で、いいですか?」
と、たずねた。


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