反応
ジャクロウが刀を構え、光の衝撃波をかいくぐり、突き進む。
「所詮人間ごとき…」
ケテルは間髪をいれず衝撃波を繰り出し、
ジャクロウは塔の壁に吹き飛んだ。
しかし、体勢を整え、何とか着地をする。
「くそっ…近づけもしねぇ…」
ケテルは明らかに遊んでいる。
遊び終わったら殺すつもりでいる。
ジャクロウはそれを感じていた。
「顔はいいけど、やな感じ…」
ラミリアも似たようなことを感じているらしい。
「光の神様らしいけど、やること高圧的で陰湿って感じ」
ラミリアは詠唱を始めようとする。
先ほどから衝撃波で魔法があたらない。
衝撃波で詠唱が中断されることもある。
ラミリアはいらいらしていた。
無駄とは知りつつ…どうにかダメージを与えたかった。
疲労で注意力が散漫になる。
多分ケテルはそれを狙っているに相違ない。
ケテルはケテルが思うに、無尽蔵に力があると思っているようだ。
人よりは確かに力があるかもしれない。
神の力を持ったものなのだから。
ルートたちよりは、確かに力はあるだろう。
ケテルには、隠そうともしない、おごりがあった。
そして、ルートは…何か不思議なものを感じていた。
(衝撃波…何かおかしい?)
ジャクロウ同様、衝撃波に吹き飛ばされつつ、
ルートは周りを見ていた。
詠唱するラミリア、突き進むジャクロウ、
…そして、混乱しているミシェル。
ミシェルは気がついていないが、衝撃波がさっきから当たっていない。
(主な攻撃手段が衝撃波ならば…そして、それがミシェルさんに当たらないのならば…)
衝撃波が当たらない理由はわからないが、殺されないためにはケテルを倒すこと。
そのためには、ミシェルを利用することを、ルートは考えた。
「さて、そろそろ飽きたな…」
ケテルはそう、宣言する。
多分、自分たちを殺すほどの衝撃波が来る。
あたれば致命的だ。
ケテルの槍が構えられる。
ルートはとっさに叫んだ。
「ラミリアさん!ジャクロウさん!ミシェルさんの後ろに!」
ケテルは槍を回し…衝撃波を放った。
衝撃波の威力は大きく、確かに塔の壁はあちこちぼろぼろになった…
ケテルは破壊具合に満足したようだが…
破壊されていない箇所があった。
…混乱をしたままのミシェルの後ろ。
そして、無傷のミシェル。
後ろには、ラミリア、ジャクロウ…
その後ろから、ルートが駆け出る。
咆哮し、剣を振り下ろす。
ケテルは槍で受け止める。
槍が…砕けた。
ケテルの力に耐え切れなかったのだ。
ケテルはそのまま鎧のこてで剣を止める。
輝く鎧のこては、ぎりぎりと音を立てながら、剣を受け止める。
片腕では剣が止められない。
ケテルは両腕で剣を止めようとした…
ドクン
ケテルの身体に今までにない反応が起きた。
力が抜けていく…
(まさか、まさか…次の器に力が移ってしまうのか?)
(いやだ!私は神々の最上たる神!あがめられる神!)
(人に戻るなんていやだ!)
(力は絶対渡さない!)
(器…器が、近くに…)
ケテルの脳裏にさまざまのことが錯綜する。
「器を…壊せば…私はまだ神に…」
衝撃波の当たらないミシェルを、ケテルは思い出した。
「あいつが…」
ドクン
反応と同時に、背中から何かが刺さった感覚があった。
それは、熱さとともに、続いて痛みを伝えてきた。
刺さったのだ、何が?
ケテルはルートの剣を両腕で受け止めながら…無防備な背中を見る。
輝く鎧は背中から貫かれている。
そこには、血まみれの槍を刺したミシェルがいた。
「あなたが…間違えた神だ」
ドクン
血液とともに、神の力が流れ出している感覚がする。
(こいつが…次の…)
体温は落ちていく。
すべてが背中から流れ出てしまうような、感覚と痛み。
ケテルは死を思った。
(いやだ!)
ケテルは否定した。
(私が最上の神…時神マルクト以上の…)
この期に及んでもケテルは力に執着していた。
(渡さぬ…決して渡さない)
ケテルは最後の力を振り絞った。
「『ご神託』だ!光神ケテルを裏切ったのは、この男だ!」
ケテルは光を放ち、
光はどこかへ向かっていった。
ケテルはそのまま力をなくし…
人となって、やがて死体に変わった。