戻る道のり


パーティーは、死人のいなくなった、死人の巣窟に入っていった。
以前ルナーに来るときに、死人は全滅させたからだ。
陰鬱な洞窟を歩き、
ある場所で、ディーンが気がついた。
「ギィ…」
それは、死人の洞窟の指揮官の死体だった。
ディーンは、ギィを弔い、
「ここは死人の集う場所…誰かが死ねばここに来る…ギィの魂…それまで、休め」
ディーンは、ラミリアに炎魔法を頼んだ。
ラミリアの炎魔法は、ギィの死体を焼き尽くした。
ラミリアは赤い瞳に炎を映していた。
何か、感情があったように思われたが、読み取りにくかった。
「死体が焼けるにおい…きらい」
「そうか…」
ルートはラミリアとディーンの言葉の裏に、
何かあるような気がして、話しかけようとした。
何か言い出す前に、ジャクロウがルートの肩をたたいた。
ジャクロウは首を横に振った。
わざわざ聞くものでもないというように。

死人の巣窟から、ルシファーの祭壇に出る。
「ここをラクリマの民が大挙して通っていきましたが…なにかあったのですか?」
ルシファーの祭壇にやってきた、聖職者が、ルートたちに問いかけた。
「ルナーに攻め入ってきた…後は、想像で補ってくれ」
ディーンは言葉少なに返した。
聖職者は、わかりましたと返した。

ルシファーの祭壇から外に出る。
常闇から抜けて、
青い空がまぶしい。
草原が波うっている。

道のりにモンスターが出ない保証はないので、
パーティーは死人の巣窟の近く、マリス城で薬をいくつか買うことにした。
回復魔法を得意とするパーティーではない…今は。
(イリス、クライルさん…みんな回復魔法が使えていた…)
ルートは、自分のいろいろな傷跡を見る。
(ミシェルさんも使えたのかな…)
光の攻撃魔法だけではないだろう。
一緒にずっと旅をしていれば、彼の回復魔法を見る機会もあったかもしれない。
あんなに悲しい光の攻撃魔法ではなく…
ミシェルはどこへ行ってしまったのだろうか…

ルートはぼんやり考え事をしていた。
そのルートの後ろに、ぬっと人影が立った。
ルートが振り返る。
そこには、かぼちゃ頭の…
「南瓜丸さん」
「やぁ、ルート君、ルナーでは収穫はあったかな?」
南瓜丸はルートがルナーに行ったことを読んでいる。
「ええ…まぁ…」
「得るだけではなかったのだね」
「はい…」
ルートは素直に答えた。
「そんな君に!」
南瓜丸は「ジャーン!」と自分で言いながら何か石を取り出した。
「これはテレポストーン。石が覚えている場所にどこでもいける石だ。しかも何度でも使える優れもの!」
南瓜丸はルートにテレポストーンを握らせ、
「これは君が使いたまえ」
恐縮するルートに、南瓜丸は身を翻し、
「ではまたどこかで逢おう!ルート君!」
と、高笑いしてどこかへ行ってしまった。

皆が買い物を終えて戻ってきた。
ルートはテレポストーンのことを話した。
ラミリアがテレポストーンの質を確かめる。
「これは…今から行った所じゃないとだめみたいね」
「今からって…ここ、マリスからですか?」
「そう、結局シリンまでは歩くことになるわ」
「わかりました…そういうものなんですね」
ルートは珍妙な石に納得した。
テレポストーンとやらは、そういうものらしい。

一行はさらに北上した。
風は少し涼しくなり、
やがてラクリマの町が見えてきた。
ラクリマの町は、誰もいなかった。
皆が戦いに赴き…結果、ミシェルに消された。
「…帰ってきてないんだ…」
ラミリアがぽつりと言った。
ルートは「誰が…」とだけ言いかけてやめた。
多分ラミリアに縁のあるもののことなのだろう。
帰ってきていないということは、
ルナーに攻め入ったものなのか、そうでないのか…
いろいろ考えることがあり、ルートは聞くのをやめた。
一行はラクリマを後にした。
ルートは振り返った。
ラクリマにはもう、あのときのような、射るような光がないように感じられた。

海底洞窟を抜け、
一行はシリンを目指す。
洞窟を出ると、
潮風が懐かしかった。
シリンのほうから活気が伝わってくる。
「シリンに行きましょ」
ラミリアは歩き出した。
皆がそれに続いた。


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