次へと
ルートたちは、竜人の村に戻ってきた。
のどかな村の奥の建物に向かい、
前に来たときと同じように、竜の首の置物でノックした。
「はい」
ドアの中からノエルの声がした。
「ソウルボールに地竜の魂を入れてきました」
ルートが答え、
ドアが開いた。
通された寝室には、前と同じように、クライルが眠っている。
「ソウルボールを、彼に掲げてください」
ノエルが指示する。
ルートは言われたように、ソウルボールをクライルの上に掲げた。
ソウルボールから光があふれ、クライルを包むと、やがてクライルに吸い込まれていった。
ソウルボールは空っぽになり、
クライルから、苦痛の表情が消えた。
ノエルが説明をする。
「今、彼は、魔力でずたずたになった心身を、地竜の魂で癒している状態です。じきに目覚めましょう」
ルートは、ほっとした。
ノエルが竜人の茶を入れてくる。
ルートたちは、クライルが目を覚ますまで、付き添うことにした。
ルートが茶を口に運ぶ。
竜人のお茶は、不思議な味がした。
ラミリアも茶を飲み、そして、口を開く。
「それで、ノエルは考えてくれた?」
ラミリアは、にっこり笑う。
「何かあったのか?」
ジュリアが問いかけると、
ラミリアは笑顔で話し出した。
「あたし、ノエルに一目ぼれしちゃったの。それで、生きて帰れたら、結婚しようねーって」
「いつ言ったんだ!そんなこと!」
ジュリアがびっくりすれば、
ラミリアは、しれっと、
「ここを出る前に、紙切れに書いて渡してたのー」
ラミリアはブイサインをする。
ジュリアはあっけにとられる。
ラミリアは改めて、ノエルに向き直る。
「それで、結婚はどうするの?」
ノエルは少し考え、
「私は女ですが…」
と、告白する。
「男じゃなかったのかよ!」
ジュリアが突っ込みを入れる。
「あたしもオカマだし、性別は問題ないわね」
「いや、そういう問題じゃなくて」
「どうするの、結婚ー」
ノエルは微笑んだ。
「この村に住むということであれば、結婚をしましょう」
ノエルがプロポーズを受けると、
一拍、間をおき、
ラミリアは、感極まり、うるうると泣き出してしまった。
「泣かないでください」
ノエルがラミリアをやさしく抱きしめる。
「…シリンに、家族がいるから、連れてきて、一緒でもいい?」
「いいですよ、いい家庭にしましょうね」
ラミリアとノエルがまとまったのを、
他のメンバーは呆然と見ていた。
「うっ…」
男の声がした。
「ここは…」
ルートが振り向く。
そこでは、クライルがベッドから起き上がって、あたりを見回していた。
「クライルさん!」
ルートが駆け寄る。
「ルートか……久しぶりだな」
「もう、大丈夫なんですか?」
ルートがたずねると、
「ああ、大丈夫だが…」
と、クライルは自分の右手を見た。
「どうかしましたか?」
「いくつか夢を見ていた気がする…それがどうも引っかかっている」
「夢?」
「ああ…」
クライルは、見た夢の話をし始めた。
焼け野原から、竜の背に乗る夢。
ラシエルのずっと地下、女性がガラスの鳥を飛ばす夢。
飛ばしたガラスの鳥が、自分の中に入って、力となる夢。
竜が、壊れそうなクライルを守る夢。
フェンダーがどこかで眠っている夢。
一通り話して、
「やけにリアルだったがな」
と、クライルは話をまとめた。
「それは…ある程度は本当だと思います」
ルートは話し出す。
クライルの部屋の地下に、水神ケセドがいたこと。
水神ケセドは神の力をガラスの鳥にして、次の器に力を渡したこと。
地竜の魂でクライルを治したこと、
地神はフェンダーという男に力を渡すといっていたこと。
話すことは苦手だが、何とか伝わるように話した。
クライルは考え込む。
そして、
「では、次の水神は私で、次の地神はフェンダーだと」
「おそらく」
と、ルートは答えた。
「フェンダーは生きているのだな」
「地神が言っていたのですから…多分」
「そうか…」
クライルは天井を見上げ、考え、
そして、ルートに向き直り、話す。
「私もまた、ともに旅をしてもいいだろうか」
「身体の具合は?」
「大丈夫だ。どこかの熊ほどではないが、それなりにはできている」
クライルは笑った。
それから、テレポストーンを用いて、
ルートはシリンにいたゲブラをつれてきた。
ラミリアとゲブラは再会を喜び、
次の家族のノエルともすぐに打ち解けた。
「しばらくは、この村にいるから。何かあったらあたしも協力するからね」
ラミリアはそう言って、村に残ることにした。
ルート、ディーン、ジュリア、クライル。
4人はイディアに面会し、
次の目的地を聞くこととした。