一番目の鍵


ジュリアとテル、そして、フェンダーは、
現在のファナの村、ヴァーン研究所の寝室に戻ってきた。
テルはなんとなく時計を見てみた。
日付が変わっていないのならば、数刻としていない。
ジュリアは、こめかみに指を当て、眉間にしわを寄せている。
「どうしました?」
テルがたずねれば、
「なんか、くらくらするね」
と、ジュリアは答えた。
「仮にも心の中になど入っていたわけですし、そういう反応もあるのでしょう」
「自分で自分が情けねぇ…」
フェンダーも、やがて目を覚まし、
現実になれたころを見計らい、
いろいろと話すことにした。

ルートたちは今、天に浮かぶ城、ラピュータにいる。
ジュリアはこの地方にあるという、聖地セフィロトの鍵を探しにきた。
ラピュータには、クライルもいる。
クライルは水神を継ぐ器で、実質現在の水神。
フェンダーは、地神を継ぐ器と、
先代の地神が名指しで言っていた。
先代の地神は、地を通して力を継がせるといっていた。
フェンダーは自分を満たすものを覚醒するときに感じた。
ならば、実質地神は現在フェンダーなのだろうという暫定的結論が出た。

「それで、これから熊はどうするんだい」
ジュリアがたずねる。
「俺としては…ラシエルからルートとクライルとで旅に出たとき、世界をまともにしようと、足掻こうと決めた」
「それは、今も変わってないのかい?」
「変わってない。だから、クライルとともに戦いたいし、神であるというなら、世界を平和にしたい」
「よし、じゃあ、まずはこの地方の聖地への鍵を探そうか」

一行は、
エレキ博士の元へ行くことにした。

エレキ博士は、部屋で本をいくつも広げていた。
ぶつぶつ何かを言っている。
「父さん」
テルが声をかける。
ようやくエレキ博士が、テルたちに気がついた。
「何かわかりましたか?」
エレキ博士は、うーんとうなる。
「この本…ファナの歴史をつづった本なのだが…上巻がどこかへ行ってしまっている」
どれー、などといいながら、ジュリアとフェンダーが覗き込む。
フェンダーが何かに気がついたようだ。
「おっさん、それの上巻があればいいんだな」
「心当たりがあるのか?」
「ディアンにあったはずだ。戦士の国だから、なかなか読む機会ないけどな」
「では、持ってきてくれたまえ。そこから読み取れそうな気がする」
「おし、じゃ、行こうぜ」

ジュリアとテルは、ゼロに向かっていった。
フェンダーはドラゴンのゼロにちょっと驚いたが、
人の言うことを理解する、賢いドラゴンということに気がつき、
なんだか気に入ったようだ。

空を飛び、ディアンへ向かう。
ジュリアはだいぶ手綱を使うことになれた。
フェンダーは気持ちよさそうに、ゼロの背に乗っていた。
適応力が高いのかもしれない。

ディアンの近くに着陸し、
ゼロを待たせて、ディアンの城の中の図書館にやってきた。
ディアンは、以前に比べて開けていて、
王二人の方針が、以前とは違っていることを、うかがわせていた。
もう、詐欺師のような宰相にだまされることもないだろう。

フェンダーの記憶と、テルの検索能力を頼りに、
ファナの歴史書の上巻を探す。
小さな図書館の中、
ファナの歴史書の上巻は、ちょっとしたら見つかった。

フェンダーは、ディアンの城の中を見回した。
以前とは違う、空気。
暖かな空気になっている。
外に出れば、針葉樹の立っている、少し寒い地方だが、
ディアンの中は、人々が寄り添う、兵士同士が助け合う、暖かな国になっていた。
フェンダーは、それもいいと思った。

「さて、テレポストーンで戻るよ。ゼロにいっとかないとね」
ジュリアは、ゼロに行き先を伝え、
テレポストーンでテレポートした。
ゼロはファナの村を目指した。
そして、ファナの村のちょっとはずれで羽根を休めた。

エレキ博士が、ファナの村の歴史書を読み解く。
そして、
「あった、これだ」
と、エレキ博士が記述箇所を見つけた。
「ファナの村のここ…昔、地下に何かを守護者とともに隠したらしいぞ」
「守護者?」
「記述としては、守り続けるもの、と、ある。神より渡された大切なものを、守り続ける、と」
「間違いないね…場所は?」
エレキ博士が記述から分析する。
「教会の外だな、教会は長年拡張工事もしていないし、外のどこかに地下への入り口があるはずだ」

一行は、ファナの村の教会を目指した。


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