再会


ゼロはラピュータのいつもの場所に着地すると、
乗っていた、ジュリア、ビナを担いだフェンダー、そして、テルが降りた。
テルは、機械の外観に目を奪われたようだ。
「ここがああなっているから…なるほど、ナンセンスの打ち所もないほど、完璧な仕組みですね…」
などと、ぶつぶつ言っている。

ジュリアは扉を開けた。
『鍵が手に入ったようですね』
ラピュータの音声が出迎えた。
「ああ、この通り」
ジュリアが鍵を示した。
ラピュータが、鍵にライトを当てて、どうも分析をしているようだ。
そして、
『間違いなく、聖地への鍵のようです』
と、ラピュータは分析結果を出した。
「あと、神の力を継いだもの、二人連れてきた」
ジュリアが言うと、
ラピュータがしばらく沈黙し、
『確かに、地神と月神をきちんと継いでいるようです』
と、ラピュータは判断した。
『その機械には、先代の月神と日神が宿っているようですね』
フェンダーが担いでいる機械の身体に、ラピュータがライトを当てた。
「はい、そのようです」
テルが答えた。
『機械の身体のほうは、私のほうで配線を整えます。まずはそこにおろしてください』
フェンダーは言われるままにビナの身体を下ろし、
ラピュータ内の作業をしている白いロボットが、ビナの身体をどこかへ持っていった。
『ビナは、私、ラピュータを作った母のような技術者です。こんな形で再会できるとは思いませんでした』
ラピュータは、機械らしくなく言った。

ジュリアとフェンダーとテルは、
奥の間へと向かった。

奥の間の扉を開いた。
ルートが、クライルが、ディーンが、
扉を開けたジュリアと、ともにやってきたフェンダーとテルに注目した。
「テル…」
ルートが思わず言葉を区切る。
何から話していいかわからない。
「…無事でよかった…」
ルートは、それだけを言った。
テルはにんまり笑い、そして、マシンガンのように話し出す。
「大体ルートは、ずっと音沙汰なしかと思えば、神様云々なんて大きなことに巻き込まれているじゃないですか!僕をほっといて、危険だとかワクワクすることだとか、めちゃくちゃな思いをしているじゃないですか!僕だって旅をしたかったのです!その僕を今までほっとくなんて、ほっとくなんて、そんなの」
テルが一拍呼吸をおき、
「ナンセンスです!」
と、大きく言い放った。
ルートは思わず笑った。
つられてテルも笑った。

ジュリアは、テレポストーンを次の鍵を取りに行く、クライルに投げて渡した。
「ファナとディアンとアージュが追加されてる。よかったら使ってくれ」
ジュリアの説明に、クライルはうなずいた。

まだ、笑顔で話し合っている幼馴染を、
クライルは微笑みながら見ていた。
「クライル…」
フェンダーが声をかける。
「俺はクライルを…」
クライルは、視線を落とし、そして、また、あげ、
フェンダーに視線を合わせる。
フェンダーは何もいえなくなってしまう。
「死ななかったんだな。お前は」
「あ、ああ…」
「いずれ伝えることがある。それまでは、死ぬな」
「ああ…」
「次は私が鍵を取りにいく番だ。つかの間の再会だな」
フェンダーが熊のような身体で、さびしいと訴える。
クライルは、手を上げる。
わからないというように、フェンダーが戸惑う。
「ハイタッチというやつだ。お互いの手をたたいて、この場合は、無事でも祈ろう」
「…ああ」

そして、ハイタッチは快い、いい音を立てた。

クライルは、そのまま振り返ることなく、
奥の部屋を出て行った。

「鍵の周りには危険が伴う…言っといたほうがよかったかね」
ジュリアが、クライルの出て行った扉を見ながらつぶやく。
「クライルさんほど聡明なら、きっとわかりますよ」
ディーンがフォローを入れる。
「そうだな」
ジュリアは、お茶で一息ついた。

クライルは、ゼロの休んでいるラピュータの外周にやってきた。
クライルはゼロに話しかける。
「これから、竜人の村に行こうと思う」
ゼロはわずかに喜んだようだ。
「ラクリマのことも気にかかる。まずは、対抗策をとりたいところだな」
黒い魔術の渦、と、最初に言われた。
殺して力を得る類のもの…殺した数が多いほど強くなるという。
禁呪というやつかと、クライルは見当をつけた。
「さて、何かいい情報があればいいがな」
クライルはゼロに飛び乗る。
ゼロが一声鳴く。
「さぁ、お前の故郷へ行くぞ!」

ゼロは大きな翼を羽ばたかせ、
クライルを乗せて、竜人の村に向かった。


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