二番目の鍵


クライルとラミリアは、
ゼロをとりあえず待たせたまま、
テレポストーンでシリンへと向かった。
それには、目的がある。
チェスコをラクリマにつれてきて、
聖地への鍵のありかを聞き出すことだ。
そして、ブラックもいるのなら、
ソウルロッドをまた、眠らせてほしいとも思った。

クライルとラミリアは、シリンにやってきて、
先ほどの酒場に向かった。
チェスコとブラックは、相変わらずの席で、話をしていた。
チェスコが二人を見つけ、微笑んだ。
ラミリアはチェスコに報告をした。
ラクリマの黒い渦は元から絶ったと、
ラクリマは元通りになっていると、
それから、ラクリマにあるはずの聖地への鍵をほしいこと、
以上を、包み隠さず話した。
チェスコは、少し考え、
一緒に行って探すと申し出た。

クライルは、ブラックにソウルロッドを渡した。
「役に立ったか?」
「はい」
ブラックとクライルで短いやり取りがなされる。
ブラックは、ソウルロッドに語りかける。
「食うだけ食ったろ。また、寝ろ」
(そうする、じゃあな)
クライルの意識に、ソウルロッドが挨拶をした気がした。
そして、ソウルロッドはただの杖になった。
「こいつは俺がラシエルに戻しておく。お前らは、ラクリマの聖地の鍵を探せ」
ブラックは席を立った。
「…イェソド…」
クライルがつぶやく。
ブラックは振り向かず、
「そんなこともあった」
と、酒場を出て行った。

クライルとラミリア、そしてチェスコは、
テレポストーンでラクリマに戻ってきた。
黒い渦のないラクリマは、
まだ、人が一人もいなく、静かではあったが、
以前のまがまがしさは消えていた。

「聖地への鍵、でしたね」
チェスコが、二人を先導して歩く。
一行は、ラクリマの大聖堂にやってきた。
先ほどの黒い渦の中心だった場所だ。
チェスコが開け放たれた扉から、大聖堂に入っていく。
「ちょっとわかりにくいんですけど…」
と、チェスコは前置きした。
「この大聖堂自体が、魔力を増幅させる魔方陣を描いているんです」
「魔方陣?この大きな建物が?」
ラミリアがあたりをきょときょととする。
クライルは、黒い渦の術者が、大聖堂を選んだ理由がわかった気がした。
そして、チェスコは続ける。
「はい、そう言い伝えられています。そして、この下に、封じたものがある、とも」
「また、変なのが封じられてないでしょうねー」
「それは…わかりません」
「まぁいいわ、大聖堂の下ね。地下室でもあるのかしら?」
ラミリアが、床あたりを見回す。
床には、よく見れば模様が刻まれており、
長椅子などが並んで、その模様は目立たないものになっていた。
クライルは、模様を見て、分析した。
「この模様を、一つ壊せばわかるはずだ」
「ひとつ?」
「金槌か何かでちょっと割ってみればわかる」
チェスコは、近くの家から、ハンドアックスを持ってきた。
おそらく、ルナー討伐の際にかき集められた武器の残りであろう。
ラミリアが、床の模様を、ハンドアックスでごつごつと壊す。
そして、ばきっと床が小さく壊れると、
途端に、大聖堂の真ん中あたりの床が輝きだす。
クライルは魔法の詠唱をし、
真ん中に向かって、解き放つ。
氷の魔法で壊れた真ん中は…奇しくも、術者が立っていた場所だった。
そして、壊れたそこには…
不思議な色合いの鍵が、大聖堂の魔方陣で力を増幅され、
きらきらと輝いていた。

「二番目の鍵だ」
クライルが鍵に近づいていき、拾う。
「壊して、すまなかった」
クライルが深々と謝ると、
チェスコは、
「どうせ一からやり直しの町です。この程度なんてことないですよ」
と、笑った。

クライルとラミリアは、ラクリマの町を辞することにした。
クライルは、ゼロの背に乗り、
そして、ラミリアも乗るように促す。
ラミリアは、意を決したように、乗る。
「このままラピュータに行って!」
ラミリアは叫んだ。
クライルもゼロも戸惑う。
「神様の混乱が終わったら、あたしも帰る。それまでは…」
ラミリアは、ぐしっと顔をぬぐった。
「行って!」

ゼロはラピュータに向かって飛び始めた。
「あとで、ラピュータから手紙でも出すといい」
「…うん」
言葉少なにラミリアは返し、
ゼロはラピュータを目指した。


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