決意


ルートは、皆がいる奥の部屋へと戻ってきた。
白い扉が開かれる。

皆がいる。
ルートは、部屋に一歩踏み出し、
右手に握っていた、聖地への鍵を見せた。
「聖地への鍵ですね。さ、鍵入れに入れてください」
テルが自慢の自作鍵入れを取り出す。
ルートは鍵をはめ込み、
鍵入れは不思議な色合いの輝きをすると、
また、落ち着いた。
「さぁ、これで聖地にいけるはずです」
テルが満足そうに言うが、
ルートは少し考え、
「みんな、聞いてくれないか」
と、話し始めた。

聖地セフィロトは、名も無き火山島にある。
ラピュータのコアに入り、聖地への鍵を取ってくる際、
マークという存在が一緒に入ってきた。
聖地セフィロトのことは、マークから聞いた。
聖地には、彼、マークがいる。
ラピュータへのコアに来れるくらい、かなりの力を持っていると推測される。
その存在はミシェルに似ており、力を持っている。
彼は、聖地を守るものを召喚し、
ルートたちから聖地を守らんとするらしい。

「僕は、世界の異常を正そうとしていますが…」
ルートはそこまで話し、言いよどむ。
「魔狩りのようなことが、また起こらないとも限らないことを、マークから言われました」
「魔狩り…」
ジュリアが反芻する。
何かを考えている風だ。
昔を思い出しているのかもしれない。
「人は間違いもする。また間違えるであろう、人間のいる世界を、正して、本当にいいものでしょうか」
「どういうことだ?」
フェンダーが聞き返す。
「うまくいえませんけれど…」
ルートは考えながら話す。
「聖地へ赴き、世界の異常を正したとして、平和になるとは限らず、完全な世界にはならないかもしれない…」
「人がいるゆえ、間違いを起こすゆえ、か」
クライルがまとめる。
「完全な世界を目指しているわけではありません。それでも、世界の異常を…神の力によるものを…」
ルートは言葉を区切る。
「どうにかしようと、足掻くことをしようと思います」
ルートは、皆を見た。
異論などは無かった。
ルートは続ける。
「マークという存在は、聖地を守るものを召喚するといっていました」
皆は黙ってルートの次の言葉を待っている。
「聖地へ赴くのであれば、神の力を持っているとはいえ、それなりの武装が必要かと思われます」
「そうだな」
ディーンが肯定する。
「ルートと私は、ブラック師匠に呼ばれていただろう。何かあるのかもしれない」
「そうですね…」
それまで黙っていた、ラピュータが音声をつないできた。
『コクマとビナの機械の身体が接続終わっています。何か知っているかもしれません』
「僕はビナと話がしたいです」
とは、テル。
「コクマなら、力の使い方もわかるかもしれないな」
とは、ジャクロウ。
『ラピュータ内部にも、昔使われた武器がいくつか眠っています。よろしければ』
「力仕事なら任せろ」
と、フェンダー。
「では、僕とディーンさんは、テレポストーンでブラック師匠のところへ行ってきます」
「じゃ、ゼロはラピュータにおいてくんだな」
ジュリアが確かめる。
「誰かが、何か求めるものがあった場合、ゼロに乗れるように、です」
「わかった。師匠とやらによろしくな」
皆に見送られて、
ルートとディーンはテレポストーンでシリン近くにテレポートした。

シリンまで、少しだけの間、
ルートとディーンは会話をする。
「しかし、同じ師匠のものだったとはな…」
「ええ、僕も驚きました」
「師匠はまだ、シリンにいるだろうか」
「いなければ、師匠の庵に行ってみましょう」
ルートは思い出す。
シリン近くまでつれてこられて、
剣の修行付けだった日々。
ある程度まで剣の腕を磨いたら、
ファナに返されたが、
ファナの村から離れるようになった。
しかし、どうして…
どうして、ブラック師匠はわざわざシリンまでルートを連れて行ったのだろう。
「どうして…でしょう」
「なにがだ?」
「どうして俺をファナからシリンまで連れて行って、剣の修行をさせたんでしょう」
「師匠のことだ、何か考えがあったのだろう。あるいは…」
「あるいは?」
「何かと戦えるように、かもしれない」
「何かと…」
ルートはマークを思い出す。
ミシェルの姿をした、ミシェルで無いもの。
彼はルートを憎んでいる。
一戦は避けられない。

ルートは、戦うことを決意した。


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