戦いへの準備


ゴッドスレイヤーを手に入れたルートは、
ルナーからテレポストーンでシリンまで飛び、
シリンのはずれの、ブラックの庵を目指した。
ブラックの庵では、ディーンが待っていた。
お互いの無事を確認する。
お互いの剣の気配が変わっていることに気がつく。
剣士たちは無言でわかりあった。
「では、ブラック師匠。僕たちはこれにて」
ブラックはうなずいた。
「まぁ、せいぜい足掻いてみろ」
ブラックに見送られて、ルートとディーンはラピュータへとテレポートした。

ラピュータの外周に、テレポートする。
ゼロはいつもの場所で眠っている。
扉を開くと、いつもの白い空間。
『おかえりなさい』
ラピュータの音声だ。
『皆、武器を探し回っています。しばらく待てばいつもの部屋に集うでしょう』
「では、しばらく待ちますか」
ディーンはうなずき、
ルートとディーンは、奥の部屋へと歩いていった。

奥の部屋には、クライルがいた。
書物を読んでいる。
ルートたちが入ってきたことに気がつき、微笑んだ。
「その様子では、それぞれの武器が手に入ったのだな」
ルートはうなずいた。
「クライルさんは、何を?」
「魔法の最終確認をしている。他の者もそろそろ来るだろう」
話が終わるやいなや、扉が開いた。
テルとジャクロウが騒ぎながら入ってくる。
「ですから、ビナのお話を聞きたいと、僕は言っていたじゃないですか」
「コクマの技を教えてもらいたかったんだよ」
「順番ってものがあるじゃないですか!ナンセンスです!」
「まぁまぁ…二人分聞けて、結果よしってことにならないか?」
「まったく…ナンセンスです」
テルはため息をつき、
そしてようやく、ルートに気がついた。
「あ、ルートお帰りなさい」
「ん。ビナからは何か聞けたか?」
「はい、いまやビナはラピュータの一室につながれた状態なのですが、意識や記録ははっきりしていて…」
「ふむ」
「僕は雷魔法を打ち出す銃などを教わりました。結構ガラクタでも作れるものですよ」
「さすが、テルだな」
「ほめても何も出ませんよー」
と、テルは笑った。

続いて扉から入ってきたのは、
ラミリアとフェンダーとジュリアだ。
「よぉ、みんな見つかったのか?」
ジュリアが軽く声をかける。
「ジュリアさんは?」
ルートがなんとなしに話を振る。
「ん…ラピュータの部屋の中で、切れ味いい短剣見つけた。これでいいかと思う」
ジュリアが短剣を抜く。
きれいに光る、滑らかな刀身だ。
「あたしも見つけたの。ほら」
と、ラミリアが取り出したのは…服だ。
「服?」
と、ルートが聞き返す。
「ええとねー、これは勝負服よ。なんでも、魔力を少しあげる効果があるんだって。ラピュータが言ってた」
「そういう意味の勝負服ですか…」
「まぁ、ある意味勝負よ」
ラミリアは、笑った。
「まぁ、こういうのを発掘したのは、俺のおかげでもあるがな」
フェンダーが自慢げに胸を張る。
「まぁそうだな、よくやった、ホモ熊」
ジュリアが言えば、フェンダーは大げさにつんのめった。
「ホモとか言うな!」
「事実じゃないかよ。どうなんだ?」
「ぐ…」
フェンダーは言葉に詰まる。
クライルが大きくため息をつくと、
「それでフェンダー、お前は何を発掘してきた?」
と、助け舟を出した。
フェンダーは、右手にすっぽりはまる、手甲に鉤爪のついた、素朴な装飾を持った武器を取り出した。
「変な話かもしれないけど、俺の手にすごくあってて…びっくりしたんだ」
鉤爪の武器は、武器としての能力の高さも伺え、素朴な装飾とあいまって、フェンダーらしいとクライルは思った。

ルートが皆を見渡した。
「では、ここにいるすべてが、聖地へと赴く…それでいいんですね」
皆は否定しない。
「聖地にはおそらく、聖地を守るものが召喚されているはずです」
「わかってるよ」
ジュリアが口を挟んだ。
「ルート、あんたは見届けろ。神様の力の混乱の行く末を。多分それがあんたの役目だ」
「僕の役目…」
ルートは、マークを思い出した。
マークはなぜ、ルートを憎むのだろう。
なぜ、聖地を守らんとするのだろう。
マークを知ることが、
この混乱の行き先を示すように思われた。
「聖地へ赴き、世界の異常を正す…」
ルートはつぶやく。
「足掻けるだけ、足掻くだけです」
力の限り生きること。
ある意味、聖地に赴くのは、それが理由なのかもしれない。

その頃、とある空間の中、
マークは幾人もの剣士や術者などを召喚していた。
「この世界を美しいものにする、神のために戦う。その戦士を募っている」
召喚されたものは、
イリスの美しさに魅了され、
そして、美しい世界と約束された地に呼び出されたことに歓喜した。
「約束された世界のために!聖地を守り抜け!」
マークの言葉に、皆が歓喜の雄たけびを上げた。


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