召喚されたもの
ルートたちは、日がそろそろ傾き始めた中を、
遺跡に沿って歩いた。
奥のほうに扉が見える。
岩にはめ込まれた感じの扉だ。
テルの手元の、鍵入れが反応する。
「あそこが、聖地への入り口…」
テルがつぶやく。
ルートたちは扉までやってくると、
テルの鍵入れから、反応をしている聖地への鍵を取った。
おもむろに、鍵穴に差し込み、ガチャリといわせる。
鍵を抜き取った。
途端、扉は重い音を立てて開き…
「よけろ!」
と、ジャクロウが叫んだ。
扉の向こうからは、血の気の無い、人間の形をしたものが、
扉の向こうから雪崩のように押し寄せてきた。
「日輪流、三十壱式!清流!」
ジャクロウの刀に日の光のような輝きがともり、
勢いよく振ると、それは地を走り、人の形をしたそれらを、影に変えていった。
「ジーちゃん!後ろから行くわよ!」
ラミリアの明るい声がかかり、ジャクロウはすばやくよけた。
「メガファイア!」
ラミリアの、炎神の力が炸裂する。
目がなれてくれば、
奥に扉があることに気がつく。
「ルー君、奥に!」
ラミリアが指差す。
ルートはうなずき、
ジュリア、テル、フェンダー、クライル、ディーン。
以上をつれて、人の形をしたそれらをかわしつつ、奥の扉を目指した。
人の形をしたそれらは、ルートたちを阻もうとする。
「てめーらの相手は、俺たちだ」
ジャクロウが刀を構える。
「そゆこと」
ラミリアはにっこり笑い、勝負服を翻した。
「さーあ、何体いるかわかんないけど、ばしばし倒してくからね!」
ラミリアは明るく言い放ち、詠唱を始める。
ジャクロウは眼帯のないほうの目を細め、うなずいた。
ラミリアを守るように、ジャクロウが刀を振るう。
ラミリアが魔法を発動させる。
「メルトダウン!」
あたり一面が、溶けんばかりの熱で支配される。
人の姿を借りた、
召喚されたものは、
多分、魂すら残さずに解けた。
それでも…どこからか、人の形をしたそれらは沸いてくる。
ラミリアは、心底うんざりしたような表情をした。
「任せろ」
ジャクロウが短く言う。
ジャクロウが、刀を構え、意識を集中する。
「日輪流、零式!影狼!」
ジャクロウの刀から、闇色の獣が現れる。
闇色の獣は、人の形をしたものを引き裂き、
あるいは食った。
「召喚…」
「集中力の勝負だ。途切れれば食われる。これは、コクマから教わった」
「その前に、じゃんじゃんばりばり倒していこう!」
ラミリアの明るいせりふに、ジャクロウは口の端だけ笑った。
奥の扉は鍵がかかっていなかった。
一行は扉を体当たりで開き、
廊下を突き進む。
さらに奥に扉。
テルの鍵入れが反応する。
使う鍵は、多分、残り3つ。
「テル、どれだ!」
ルートが走りながら問う。
「これです!」
テルは鍵入れから鍵を取り出し、ルートに渡す。
ルートは鍵で奥の扉を開く。
ガチャリとなると、ルートはゆっくり鍵を引き抜いた。
扉がゆっくり開き、
次に、業火が襲ってきた。
「フリーズ!」
クライルが氷の魔法を繰り出す。
業火は熱もろとも凍てついた。
「行け!」
クライルが叫んだ。
ルートはうなずき、
テル、ジュリア、ディーンを連れ、
奥へと突破していった。
様子から察するに、扉を体当たりで開いたのだろう。
クライルは、改めて状況を把握しようとした。
業火を放ってきたのは、白いローブをまとって、術者と思われる、およそ10体。
そして…自分のそばには、
「フェンダー…」
フェンダーは、奥へと進まなかった。
クライルは、ため息をついた。
「足手まといには、なるな」
クライルは忠告する。
「クライルを守らないと、死んでも死に切れない」
「お前は、馬鹿だ」
「馬鹿で結構!」
フェンダーは、ぶんっと右手を振り回した。
その腕には鉤爪がついている。
術者が業火を繰り出さんとしている。
クライルも詠唱を始めた。
フェンダーが構える。
業火が放たれ、
クライルが魔法を放つ。
「コールドツイスト!」
クライルの両腕から、凍てつく竜巻が放たれる。
業火と相殺しあい、
フェンダーはその間に、
術者との距離を縮め、
術者を1体屠った。
「どうよ」
「戦いはまだ終わっていない。次が来るぞ」
「おうよ」
「…生き残れ」
「ああ」
短いやり取りのあと、また、術者は業火を放ってきた。
フェンダーとクライルは、目で確認をすると、
それぞれの戦いを展開していった。
ルートは突き進む。
次の扉はすぐ前にあった。